本年度は、京都大学霊長類研究所との共同研究において、「野生と飼育下のニホンザルにおける顎骨形態に関する研究」を進めた。本研究では、試料として、島根県・鳥取県・京都府・滋賀県・福井県の集団由来の成体のニホンザル(オス30体、メス26体)の下顎骨格標本を用いた。これらの試料を野生グループ・飼育導入世代グループ・飼育下3-4世代後グループの3グループに分け(各グループ、雄雌約10体ずつ)、「野生グループは飼育下のグループよりも下顎骨形態は頑丈である」という単純化した作業仮説を検証した。下顎骨計測器およびデジタルノギスを用いた各種外部形態計測の比較結果として、雌雄ともにグループ間に一貫した頑丈性に関わる形態差のパターンは見られなかった。さらに、マイクロCTスキャナとCT画像解析ソフトを用いて、下顎骨正中断面形状における骨質面積や断面二次モーメントなどの断面特性値を算出した。比較結果として、雄雌ともにグループ間での有意差は多くの項目において検出されなかった。サンプル数が限られており結論的ではないものの、本研究の予備的な結果は、霊長類研究所の所蔵標本に限った場合、野生と飼育下の顎骨形態には大きな差はみられないことを示唆するものである。また、種間比較を行う際に、野生・飼育下の標本をプールして使用することで結果に大きな影響は与えないことも示唆する。
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