研究課題/領域番号 |
26840157
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
高橋 遼平 山梨大学, 総合研究部, 助教 (40728052)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 動物考古学 / 古代DNA解析 / 家畜化研究 / イノシシ・ブタ / 先史人類学 |
研究実績の概要 |
太平洋島嶼地域を舞台とした先史人類の移動や適応の解明が本研究の目的である。本研究では先史人類の移動や資源の持ち込みをイノシシとブタ(Sus scrofa、以下イノシシ属)に着目して探る。 先史遺跡から出土するイノシシ属の骨を用いたAncient DNA(古代DNA)解析を行うため、平成26年11月に沖縄県立埋蔵文化財センターにて白保竿根田原洞穴遺跡から出土したイノシシ属の骨を対象にDNAサンプリングを行った(立会:波木基真氏・藤田祐樹氏)。同年12月には国立民族学博物館でミクロネシアのファイス島先史遺跡から出土したブタの骨からDNA試料を採取した(立会:印東道子氏)。さらに平成27年3月にはベトナム社会科学院(ハノイ)に収蔵されている先史遺跡出土のイノシシ属骨からDNA試料を採取した(立会:Nguyen Thi Mai Huong氏)。ハノイでの調査の際は、ベトナムのイノシシ集団の遺伝的特徴を把握する目的で、同機関に収蔵されている現生骨格標本を用いたDNAサンプリングも実施した。なお、平成26年6月に所属機関が変わったため、新しく古代DNA解析用の実験施設をセットアップした。資料保管用の冷凍庫や実験機器の設置にくわえて、施設内と実験機器のDNAコンタミネーション対策を講じた。 古代DNA解析を目的としたDNAサンプリングと並行して、これまでに採取した現生リュウキュウイノシシ試料のDNA解析を行い、解析結果を国内学会および国際学会で発表した。2014年9月にSan Rafael(アルゼンチン)で開催された国際考古動物学会第12回大会(ICAZ 2014)でポスター発表を行った。また同年11月には第68回日本人類学会大会(浜松)でポスター発表を、日本動物考古学会第2回大会(若狭三方縄文博物館)で口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は所属機関の変更に伴い、古代DNA解析用の実験施設を新たに設置する必要が生じた。このため平成26年度に予定していた先史遺跡出土資料の解析が遅れている。しかし研究計画を調整し、ファイス島先史遺跡出土資料や沖縄県の先史遺跡出土資料など、平成27年度以降に予定していた資料のDNAサンプリングを先に実施した。この研究計画の調整により平成27年度の実験期間を当初の計画より長く設定する事ができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、前年度にDNAサンプリングを行った先史遺跡出土のイノシシ属の古代DNA解析を優先して行う。各地域や時代のイノシシ属の遺伝的特徴を、データベース情報や自身の解析結果と比較する事で、ヒトがイノシシ属を伴って移動した時期や地域を検討する。また現生集団の遺伝的特徴の把握や、古代DNA解析の際の比較情報の充実化を目的に、現生資料を用いたDNA解析も引き続き行う。フィールド調査や文献調査を昨年度と同様に継続して行い、イノシシ属、およびイノシシ属以外の資源の利用方法や遺物情報を各時代・地域で比較する。なお現生資料を用いたDNA解析では、解析精度や解析成功率の向上を目的としたDNAマーカーの開発も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年6月に所属機関が変わったため、古代DNA解析用の実験施設のセットアップに時間を要した。これを受けて実験計画を再調整し、平成26年度に予定していた古代DNA解析を平成27年度に行う事とした。解析に使用する試薬等の実験消耗品を平成27年度に購入するため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
PCRプライマー、DNAポリメラーゼ、DNA抽出試薬等の実験消耗品を購入する。
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