古代人の口腔内病原菌の存在場所として資料中に残る歯石に注目し、歯石から生前病原菌の存在を検出する方法を探索した。これまでに現代人(n=1)、縄文人骨(n=1)、縄文人骨に付着する土壌サンプル(n=1)の口腔細菌群集分析を行い、それぞれのDNA抽出に成功し次世代シーケンサー(NGS)での分析を行い、縄文人骨からの口腔細菌検出の検出が可能であることを示した。この結果は第68回日本人類学会におけるシンポジウム(歯の人類学分科会、平成26年度シンポジウム「歯の付着物をめぐって」)にて発表した。その要旨は和文誌Anthropological Science (Japanese Series) 123巻第1号p51-58に掲載された。2015年度は引続き、歯石歯垢からのDNA抽出、NGS解析を継続した。ホスト側ではなく寄生側から故人の衛生状態を探索する新しい古病理学解析の一環として口腔細菌中の歯周病菌復元を現生試料で試みた。偏性嫌気性細菌である歯周病菌がNGSで復元することを目的としてヒトに近縁な現生霊長類ロリス(n=6)の歯垢を用いて、内部に残存する口腔細菌叢の検出を試みた。採取は終了しており、DNA抽出ができ次第、次世代シーケンサー(NGS)での分析を行う予定である。これにより本研究の目的である古人類の口腔衛生環境復元手法の開発は果たされことから順調に進展したと判断した。今後の課題としては引き続き石灰化、タフォノミ-、コンタミネーションによる撹乱からの口腔細菌叢を中心とする遺伝情報の頑強な復元方法を開発する。
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