研究課題/領域番号 |
26840159
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
齊藤 直 山形大学, 理工学研究科, 助教 (20454770)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 呼吸性アルカローシス / 酸素摂取動態 / エネルギー代謝 / 血液ガス成分 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、呼吸性アルカローシス誘導法の違いが運動時の酸素摂取動態に及ぼす影響の差異を明らかにし、さらに、運動前の呼吸性アルカローシス誘導時間が運動時の酸素摂取動態に及ぼす影響を明らかにすることである。 本年度は、呼気終末二酸化炭素分圧を20 mmHgに制御、あるいは呼吸数を60回/分に制御して呼吸性アルカローシスを誘導し、運動負荷試験(自転車運動、高強度ステップ負荷)を行なった。対照実験では、呼吸制御を行なわずに同様の運動プロトコルで運動負荷試験を行なった。呼吸制御の時間は運動負荷試験5分前から運動負荷試験終了時までとした。実験中、呼吸系及び循環系パラメータを非侵襲的に測定し、酸素摂取動態やヘモグロビン濃度動態等に関して解析を行なった。その結果、高強度負荷運動中の酸素摂取量及び呼吸商が、呼気終末二酸化炭素分圧制御群において他の条件群と比較して最も低くなることがわかった。また、高強度負荷運動開始時の酸素摂取量時定数は、呼気終末二酸化炭素分圧制御群が最も小さい値となった。従って、高強度負荷運動時、呼気終末二酸化炭素分圧制御群において脂質を用いた有酸素性エネルギー代謝が最も効率よく行なわれた可能性が示された。この結果は呼吸性アルカローシス時のエネルギー代謝システムを理解する上で重要であり、生理学的知見として学術的に貢献するものである。 また、現在、呼吸制御による呼吸性アルカローシス誘導時に血液ガス成分がどのように変化しているかを調査するため、本助成金で入手したイソフルラン麻酔システムによりラットに対して麻酔下で人工呼吸を行ない、呼吸制御をした際の血液ガス成分を測定し、解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトを対象にした運動負荷試験は順調に進行している。平成27年度も引き続き実験を行ない、呼吸制御時間や運動負荷強度の違いについても検討していく。 ラットを対象にした血液成分の調査では、平成26年度は尾部から血液を採取して血液ガス成分の測定を行なったが、血液の凝固などの問題で、経時的な解析を行なう上で難しい点があった。しかしながら、この点は想定内であり、進展度合いとしては概ね順調であると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒトを対象にした運動負荷試験では、呼吸制御時間が平成26年度は5分であったが、それを2分と10分に設定して実験を行なう。また、運動負荷強度に関しても低強度負荷運動を追加する予定である。これらの結果より、呼吸制御時間や運動負荷強度の違いについても検討する。 ラットを対象にした実験では、ヒトでの運動負荷試験における条件と同じ呼吸制御条件下での血液ガス成分を調査するため、頸静脈へのカニュレーションを行なって採血を行ない、経時的な採血をより正確にできるよう手技の改善を行なう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
動物実験の採血手技確立に時間を要し、血液ガス分析に使用する血液ガス分析用センサーカード等の消耗品代の一部が次年度に回ることになった。また、平成26年度に予定していた研究発表が平成27年度に回ることになり、それに伴い旅費の一部も次年度に回ることになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
呼吸代謝測定に必要なガルバニ電池、血液ガス分析に必要なセンサーカード、薬品等の消耗品を購入する他、実験動物代、被験者謝金、学術論文投稿・印刷費として有効に使用する。また、平成26年度から回した分も含めて旅費として使用し、積極的に研究発表を行なう。
|