研究実績の概要 |
本年度はアブラナ科植物B. rapaにおける種内一側性不和合性(UI)の花粉側・柱頭側両候補遺伝子について、形質転換体を用いた相補試験を行った。花粉側因子PUI1では6個体、柱頭側因子SUI1では4個体の形質転換体を作出し、表現型の調査を行ったところ、いずれのいずれの導入個体でもUI様の受粉時不和合性を示した。またPUI1因子の合成ペプチドを作成し、人工受粉時のめしべに対して前処理したところ、PUI1に花粉側UI因子としての活性があることを確認した。このペプチドをSUI1形質転換体に処理した場合でも、不和合性を誘起できることが分かった。これらの結果から、B. rapaにおける新規受粉時不和合性の花粉・柱頭認識に関わる両因子について、その機能を証明した。 また、B. rapa維持系統46系統を用いてSUI1, PUI1の塩基配列を決定した。SUI1では機能欠失を引き起こす欠失がいくつかのパターン見出されるともに、アミノ酸置換を引き起こす多型はあるものの完全長のアミノ酸をコードする対立遺伝子型が存在していることが分かった。現在までにSUI1からは9つの対立遺伝子型を見出した。さらに、PUI1からは7つの対立遺伝子型を単離した。さらにB. rapa近縁種のゲノム塩基配列情報を元に、SUI1, PUI1を含む遺伝子座のシンテニー解析を行ったところ、B. oleracea, B. napus, Raphanus sativusでは、相同な領域が存在するものの、Arabidopsis属植物においては当該領域が欠失していることが明らかになった。つまり、このSUI1, PUI1を含む領域はArabidopsis属植物との分化後に出現したものと考えられた。 SUI1-PUI1間約5kb領域の組換え体の探索については、当初予定よりも少ない約1500個体の調査を行ったが、組換え体を得ることはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定よりも遅れているSUI1-PUI1間の組換え体の探索について、平成26年度は多くの時間を両因子の機能証明に費やしたが、それを終えたことにより平成27年度は速やかに遂行することが可能であると考えている。また、多型調査を推し進めることにより、機能型のSUI1, PUI1をいずれも持つ系統or個体があるのかどうか調査する。また、SUI1, PUI1の単離と解析について投稿論文にする予定である。 また、SUI1, PUI1の機能を遺伝学的に証明することができたため、次に生化学的な特徴づけを行うための準備に取り掛かる。
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