研究課題/領域番号 |
26850001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高田 美信 東北大学, 生命科学研究科, 技術専門職員 (30451610)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 受粉機構 / 一側性不和合性 / 花粉・柱頭認識機構 / アブラナ科植物 |
研究実績の概要 |
本研究において見出され、その機能証明がなされたアブラナ科植物B. rapaにおける種内一側性不和合性(UI)の制御因子SUI1(柱頭側)とPUI1(花粉側)について、B. rapaでは現在までにSUI1が9つ、PUI1が7つの対立遺伝子を単離している。また、SUI1においては変異によるフレームシフトを数パターン発見している。9つのSUI1対立遺伝子を持つB. rapaを系統化し、交配実験を行ったところこれまでにわかっていたSUI1-1以外にSUI1-2, 1-3, 1-4がPUI1花粉に対して不和合性を示した。この結果から、栽培品種以外の日本由来系統中に柱頭側UIが存在していることを初めて明らかにした。 次に、B.rapaの近縁種であるB. oleracea栽培種を用いて遺伝子の単離解析を行った。公開済み両種のゲノム情報からはB. oleraceaではPUI1の欠失、SUI1中の欠損が確認されていたものの、栽培種では完全長のSUI1を持つことが明らかとなった。また、B.rapaの白菜栽培品種中においても解析した94品種中の90%以上が完全長のSUI1を持つことを見出した。これら栽培野菜の育種過程において、SUI1の機能が何らかの影響を与えていたことを示唆する結果となった。 SUI1-PUI1間約5kb領域の組換え体の探索については、本年度約4500個体の調査を行った。しかし、組換え体を得ることはできなかった。 花粉側因子PUI1について、機能型と非機能型では最小で3アミノ酸変異が存在する。これ以外にも、多型解析の結果をもとに4種のアミノ酸置換型PUI1を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請の根幹であるSUI1, PUI1の機能証明についてはすでに実験を完了し、投稿準備中である。また、Brassica近縁種のB. oleracea, B. napusさらに一部B. junceaから柱頭・花粉の両制御遺伝子を単離することができた。当初、B. oleraceaにおいてはSUI1の機能欠失が考えられていたものの、栽培品種を用いた解析により機能型のSUI1が存在していることが考えられた。つまり、B. oleraceaにおいてもSUI1-PUI1の認識を原因とする不和合性機構が保存されている可能性が示唆された。これら結果と、アブラナ科植物の種間不和合性との関係は現在不明であるが、自家不和合性遺伝子の進化や生殖的隔離にかかわる柱頭・花粉認識機構との関連という面で、非常に興味深いものであった。 一方で、SUI1-PUI1間での組換え体探索については、約6000個体の植物体を解析したが組換え体を得ることはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
SUI1-PUI1間の組換え体の探索については、さらに分離世代からの探索を続ける。また、SUI1, PUI1の単離解析について論文の発表を行う。変異を導入したPUI1, SUI1を植物体に対して形質転換によりその機能解析を行う。 また、生化学的な特徴づけを行うための準備として、低分子リガンド因子であるPUI1の部分化学合成、ならびにバイオアッセイによりその機能評価を行う。並行して、SUI1のペプチド抗体の作成、評価をおこなう。
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