研究実績の概要 |
最終年度である本年度は、昨年度から引き続き日本の栽培白菜品種からSUI1, PUI1を単離し塩基配列多型解析を行うとともに栽培品種の小松菜、カブといった白菜以外のB. rapaに対象を広げて多型解析を行った。この結果、日本のB. rapa栽培品種においては機能型のSUI1-2が主要な遺伝子型であった。また、SUI1, PUI1のアミノ酸置換系統の形質転換体作出を行い、現在までにSUI1についてアミノ酸置換の形質転換体3個体ならびにPUI1の形質転換体5個体を作出した。これら形質転換体は現在育成中であり、今後形質評価を行う。次に、低分子リガンド因子であるPUI1の部分化学合成ペプチドによるバイオアッセイを行ったものの、受粉時不和合性を誘起することはできなかった。本研究機関全体を通して、主として以下の点を明らかにした。 ・アブラナ科植物B. rapaにおけるトルコ由来野生種と日本由来栽培品種間の種内一側性不和合性はめしべ側因子SUI1(STIGMATIC UNILATERAL INCOMPATIBILITY 1)と花粉側因子PUI1(POLLEN UNILATERAL INCOMPATIBILITY 1)によってもたらされる。 ・機能型SUI1は日本の栽培品種内に非常に高い割合で固定されており、日本由来のB. rapaからは現在までに機能型PUI1は検出されず、逆にトルコ由来野生系統はすべて機能型PUI1を持ち、SUI1遺伝子型については非機能型のsui1であった。つまり機能的なSUI1, PUI1ペアが日本とトルコという地理的に隔離された集団内において、相互に片側の認識因子を失うことが本現象の原因であった。 以上の研究成果を投稿論文として投稿し、本報告書作成時において審査中である。
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