研究実績の概要 |
本研究の目的は、イネ転写因子OsWRKY23がイネの細胞壁に含まれる芳香族成分の蓄積にどのように関わるのかを明らかにし、植物の形質に与える影響を明らかにする事である。 平成27年度の研究の遅れ分を勘定し、平成28年度の計画では「OsWRKY23形質転換イネの解析に基づいた芳香族成分を高蓄積、または低蓄積する形質転換イネを作成し、糖の抽出効率の評価、及び乾燥・塩ストレスの耐性評価」を予定していた。 本年度は、PAM配列(標的配列の認識に関わる)に隣接する領域をターゲットとし、ゲノム配列上の任意の場所に変異を起こすことが出来るCRISPR/Cas9システムを用いて、OsWRKY23欠損変異体を作出した。その結果、OsWRKY23のアミノ酸配列に変異をもつ形質転換体を作成できた。その変異体の評価を行ったが、OsWRKY23 -SRDX系統で見られた長鎖脂肪酸の生合成に関与する遺伝子やリグニン、スベリンモノマーの重合に働く遺伝子の発現の変動は確認されなかった。また発現解析より、根で発現するNAC型転写因子等の発現減少が見られたが、ASFT11の発現減少は見られなかった。他の過剰発現系統においても、ASFT11の発現の変動は見られなかった。 本解析のOsWRKY23-SRDX系統とOsWRKY23- CRISPR/Cas9系統の発現解析から、OsWRKY23が、細胞壁モノマー間の結合を担うと考えられるN1,N5,N10-trihydroxyferuloyl spermidineの生合成に間接的に関与することが示された。当初の仮説とは異なる結果となり予定していた試験を実施出来ない部分があった。今後は根においてカスパリー線の形成に関与すると報告があるペプチドシグナル等の関与も視野にいれ、根における細胞壁に関する研究を継続したいと考えている。
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