研究課題/領域番号 |
26850006
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
高橋 有 独立行政法人農業生物資源研究所, 多様性活用研究ユニット, 特別研究員(PD) (70726273)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Neo-domestication / 人為突然変異 / Vigna属 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、劣悪環境に生育しているマメ科野生種を栽培化することによって、高いストレス耐性をもつ新型作物を開発することにある。植物の栽培化において重要な形質は可食部大型化、種子脱粒性の消失、種子休眠性の消失の3つであるが、これら栽培化形質はいずれも少数遺伝子の機能欠損によって生じたものであることが知られている。したがって、ストレス耐性をもつ野生種に、栽培化形質を支配する遺伝子の変異を誘導し、新たに栽培化を起こすことは比較的容易に達成できる。実際、私は病虫害に強い野生種の突然変異集団から栽培化形質を獲得した変異体を選抜することに成功した。しかし同時に順遺伝学的選抜には莫大な労力を要することも明らかになった。そこで本研究では、栽培化に関与する遺伝子を同定することで突然変異集団からの逆遺伝学的選抜を実現し、野生種を栽培かするために必要な時間と労力を短縮することを目指す。 本年はV. stipulaceaの難裂莢性変異体および難休眠性変異体の遺伝子を同定するために野生型とのF2集団を育成して遺伝学的に遺伝子を同定するための材料を整備した。同時に共同研究者によってV. stipulaceaの全ゲノム配列の解読が終了したことから次世代シークエンサーを用いた遺伝子同定手法(MutMap)が利用できる状態となった。また同定した候補遺伝子の機能解析を行うためにマメ科におけるウイルス誘導ジーンサイレンシング(VIGS)法の利用可能性を検証し、ベクターとして用いるウイルスがVigna属植物にも感染することを確認した。加えて、2度のEMS処理を施したM2M2集団から器官大型化と茎伸長に関する変異体の選抜に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画では本年中にMutMapとVIGSを行う計画だったが、植物材料育成と実験基盤構築に留まったことから、本研究課題の短期計画は遅れていると言える。しかし、突然変異体から栽培化形質に関与する目的の変異(難裂莢性、非休眠性、器官大型化)を全て揃えることができたことから、「野生種の栽培化を進める」という長期計画の達成に近づいた。現在、難裂莢性と非休眠性に関する変異体のF2世代を栽培しており、予想通りの遺伝的分離を確認したことから、期間中に前年度の遅れを取り戻すことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、昨年度までに育成したV. stipulaceaの難裂莢性および難休眠性の変異体と野生型間のF2世代各160個体を栽培しており、これらからDNAを抽出して変異型30個体および野生型30個体のDNAをそれぞれ混合してHiseq4000によりシークエンスする。Hiseq4000の利用によりコストあたりのシークエンス量が増え、より詳細な解析が出来るようになった。得られたリードからアリル存在比の歪みを検出して候補遺伝子を同定する(MutMap)。得られた候補遺伝子についてVIGSにより、V. stipulacea野生型の遺伝子発現抑制を行うことで遺伝子機能の検証を行う。同時に器官大型化変異体についても遺伝学に用いる材料育成に取り組み、最終年度の解析に備える。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、年度末の学会講演会への参加費および交通費が未確定のまま、当該研究費の所内使用期限を超えたため次年度使用額として残存した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は分子生物学実験に必要な消耗品の購入費として用いる。
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