研究課題/領域番号 |
26850018
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中野 道治 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (40705159)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二倍体野生ギク / RAD-seq解析 / 自家和合性 / 連鎖地図構築 |
研究実績の概要 |
キク属野生種を用いた遺伝解析基盤の構築には純系化モデル系統が重要な役割を果たす。我々の研究室で発見したキクタニギク自家和合性系統AEV2に由来する自家和合性遺伝子を利用して純系化を進め、2015年度中に自殖第6代系統を得た。自殖第6代において種子稔性が高い、栄養成長期、生殖成長期の形態が良い系統を選抜し、2系統をモデル系統として確立した。これら2系統について、キクタニギク連鎖地図のゲノム全体をカバーしAEV2がヘテロ型を示すSSRマーカー25種を用いて純系化の程度を評価したところ、92%、100%のマーカーがホモ型を示し、自殖世代の進行に伴い純系化が進んでいることが確認された。 リュウノウギク×キクタニギク戻し交雑集団24系統を用いてRAD-seq解析を行った。χ2検定(1:1の期待比に適合)、遺伝子型が得られた個体数が8個体以上、リュウノウギクが劣性ホモ型でF1系統がヘテロ型となるマーカーという3条件で該当するマーカーを抽出し、キクタニギクに特異的なアリルを用いて連鎖地図を作成したところ、キク属の基本染色体数9には収束しなかったものの3個以上のマーカーを含む7個の連鎖群が作成された。これら7連鎖群には合計155マーカーが含まれ、全長743.7cMとなった。キクタニギクにおいて作成された連鎖地図に位置づけられたSSRマーカーをRAD-seqマップにマッピングしたところ、RAD-seqの連鎖群が既存の連鎖群と対応付けられ、連鎖地図作成が問題なく行われていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝解析基盤を構築するための材料となるキクタニギク純系化系統を自殖第6代において選抜した。種子結実率が高く、形態が良いという条件で選抜を行った結果、2系統が選抜され、これらについてSSRマーカーを用いて調査したところ、全ゲノムの92%、100%が純系化しており、ゲノムリソースの開発に役立つ純系化系統を確立することができた。この結果より、純系化モデル系統が確立できたとみなされる。 戻し交雑集団において24系統を用いてRAD-seq解析を行ったところ、不十分ではあるが既存の連鎖群に対応付けられた連鎖地図を作成することができた。RAD-seq法により迅速にマーカーを得て、既存のSSRマーカーを連鎖群にタグ付けするマーカーとして活用し、その周辺にRAD-seq由来マーカーを置くことで高密度連鎖地図を作成できる見込みが立った。次年度には、より多くの系統を用いて連鎖解析を行うことで遺伝解析に利用可能な連鎖地図を作成できると考えられる。 これらの状況から、当初計画で想定していた程度に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度行ったRAD-seq解析の結果、EcoRI/BglIIライブラリーのデータを使用することで必要な多型を得ることができたことから、今年度も同様の手法で2集団合計76系統についての解析を追加する。RAD-seqで得られた多型情報に加えて、SSRマーカーについても解析を行い、キク属二倍体の遺伝解析基盤となる高密度連鎖地図を作成する。作成された連鎖地図を利用し、分離する形質について遺伝解析を進める。自殖第6代より選抜した自殖性モデル系統について、遺伝解析基盤とするために、変異体リソースの整備、ゲノムリソースの整備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請当初に想定していたRAD-seqの経費が他のサービスに変更することで安価に納まったため、平成27年度の使用額に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定ではRAD-seq解析は1回、96サンプルのみ行う予定であったが、他サービスの変更による必要経費の低下に伴い、平成28年度の予算額において更に96サンプルの解析が可能なことから、追加の解析を行うことに使用する。
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