研究実績の概要 |
越冬器官の形成は、多年生花卉が冬期の厳しい環境を越えて生存し続けるために必須な生理現象である。しかし、植物の越冬器官の研究は進んでおらず、形成に関わる分子やその調節機構の大部分は未知である。申請者は、リンドウの開花研究から、開花関連遺伝子の一部が開花調節以外の機能を持っており、特に塊茎や越冬芽などの越冬器官形成を調節する可能性を見出している。そこで本課題では、開花関連遺伝子の新規機能と作用機序を解明し、多年生花卉の越冬器官形成における新たな成長調節論を構築する。 本研究は、多年生植物のリンドウの越冬組織の形成において、越冬組織で機能することが予想される開花関連遺伝子GtFT1およびGtSOC1L、GtFLCの機能解明を目指した。越冬組織における各遺伝子の知見を得るために、培養系リンドウを用いた解析、形質転換体用いた解析、RNA-seqを用いた解析などを実施した。 GtFT1では、培養系リンドウを用いた解析により、地上部で発現したGtFT1タンパク質が地下部へ移行することを見出した。さらにFT過剰発現リンドウを作成し解析したところ、越冬組織の本数が減少していた。 GtSOC1L, GtFLCについての解析では、RNA-seqを利用した網羅的な解析によりGtSOC1Lは形成初期の8月、GtFLCは形成初期から12月までにそれぞれ高い発現を示した。また形質転換体の解析では、GtSOC1L過剰発現体で越冬組織の過剰形成が見られたが、GtFLCでは形質の変化は見られなかった。以上より、GtSOC1Lが越冬組織の形成に関与していることが示唆された。 本研究成果を総合すると、花成に関わるGtSOC1Lが越冬組織に関わることを明らかにした。しかし、GtSOCL1とGtFT1の関係を明らかにすることができなかった。今後さらなる解析が必要と考えられる。
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