研究課題/領域番号 |
26850021
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研究機関 | 公益財団法人岩手生物工学研究センター |
研究代表者 |
佐々木 伸大 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 園芸資源研究部, 主任研究員 (80422088)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リンドウ / キサントン / フラボノイド |
研究実績の概要 |
キサントンの一種であるmangiferinを蓄積しているササリンドウ(Gentiana scabra)の葉からRNAを抽出しcDNAを合成して次世代シークエンサーを用いてESTデータベースを構築した。相同性検索の結果、キサントンの基本骨格合成酵素であるbenzophenone synthase 相同cDNA断片が2種類獲得された。RACE法によってそれらの全長cDNAを獲得した。また、ベンゾフェノンの前駆体となるp-hydroxybenzoiyl-CoAは4-coumaric acid CoA ligase (4CL)ファミリー酵素によって合成されると考えられている。前述のESTデータベースの情報を元に、RACE法を行うことで14種類の全長 4CL相同cDNAを獲得した。現在これらの組換え酵素活性について検討中である。また、mangiferin はその基本骨格である norathyriol のC配糖体であるが、これまでnorathyriol に対する配糖化酵素活性は報告されていない。そこで、先のデータベース情報に基づいてUDP-sugar依存的な配糖化酵素(UGT)相同cDNAを単離した。組換え酵素活性を検討したところ、norathyriol配糖化酵素活性を持つものが1種類獲得された。また、リンドウの葉にはキサントンと類似した化合物であるフラボンのC配糖体が蓄積している。以前に構築していたエゾリンドウのESTデータベース情報をもとにUGT相同遺伝子を単離し、その組換え酵素活性を検討したところ、フラボンにC-C結合でグルコースを転移する酵素が1種類獲得された。遺伝子発現パターンはフラボンC配糖体の蓄積量と良い相関を示したことから、生体内でその合成に関わっていると推定された。これまでフラボンのC配糖体はフラボンの前駆体の段階で配糖化されてからフラボン骨格が合成されるという報告はあったが、フラボン骨格が完成した後にC配糖化がなされるのは初めての報告である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にしたがって、ササリンドウのESTデータベースを構築し、benzophenon synthase 相同遺伝子を単離し、また、その1段階前の反応に関わる4-coumaric acid CoA ligase 相同遺伝子も単離している。また、リンドウがもつキサントンであるmangiferinはC配糖体であるが、これまでにUDP依存型の配糖化酵素相同遺伝子も単離し、そのうちの1種類において組換え酵素が mangiferin の基本骨格であるnorathyriol に対する配糖化酵素活性を有していることが判明しており、概ね、当初の予定通り進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに獲得されたbenzophenone syntahse 相同遺伝子と、4-couric acid CoA ligase 相同遺伝子について大腸菌を用いて組換え酵素を生産し、それらの酵素活性を検討する。活性を持っているものについては酵素学的、分子生物学的に詳細な解析を行う。既に獲得している相同遺伝子で活性が認められなかった場合には、リンドウ植物体から抽出した酵素液を用いて、上記の酵素反応が検出されるかの検討を進め、活性が認められたものについて酵素精製を進める。norathyriol に対する配糖化酵素活性を有していた配糖化酵素について、その反応産物の同定と、遺伝子発現、酵素学的諸性質の解析を行うことで、mangiferin 合成経路への関与を明らかとしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた中圧液体クロマトグラフ装置を研究費の折半に依って導入し、その分で蛍光物質検出装置を導入したため、当初予算よりも備品費が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は備品の導入はなく、消耗品費として分取用液体クロマトグラフ用カラム、溶媒、酵素活性測定用のHPLC用カラム、溶媒、また、遺伝子発現解析のためのqPCR用試薬、大腸菌発現用コンストラクト作成用のキット、学会発表にかかる旅費について計上した。
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