研究課題/領域番号 |
26850024
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
福島 敦史 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (80415281)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオインフォマティクス / 遺伝子発現調節ネットワーク / 遺伝子共発現 / ディファレンシャル共発現 / ネットワーク推定 / トマト |
研究実績の概要 |
植物が有する代謝経路に関わる遺伝子発現調節ネットワークの理解は、作物収量の増大や有用物質生産能力の向上に寄与する。本研究課題は「ディファレンシャル共発現法」 (2つの実験条件下における遺伝子共発現パターンの違いを統計的に検出する手法) を中心にしてin silicoな遺伝子発現調節ネットワーク推定法の開発を行う。 共発現ネットワークの接続形態に基づいた遺伝子の重要性づけと有用形質に資する遺伝子の機能予測を行うための例としてトマト葉の形の多様性に着目した。食用種のトマト (Solanum lycopersicum) およびその野生種トマト2種S. pennelliiとS. habrochaites (これら3種は、葉の形態が大きく違う) の葉の異なる発生ステージ別RNA-seqデータセットを用い、トランスクリプトーム比較を行った。その結果、ディファレンシャル共発現解析は、種間で互いに異なった遺伝子共発現クラスター (葉の発生の違いを反映すると考えられる共発現遺伝子群の集まり) を構成する、種間での劇的な共発現パターンの変化をとらえた。このことはトマト種の各々は、葉の特徴を形作る細胞内分子ネットワークを調節する制御因子を種特異的に用いていることが示唆された。すなわち、葉の形態的多様性の背後にある共通した遺伝子共発現パターンあるいは種特異的な遺伝子共発現パターンの存在を暗示している。また、情報解析基盤整備の一環として、申請者が開発したRソフトウェアパッケージDiffCorr (Fukushima Gene, 2013) のスクリプトを引き続き改良し、ドキュメントの充実に努めた (https://github.com/afukushima/DiffCorr)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はディファレンシャル共発現法とネットワーク統計量に基づく調節ネットワーク推定方法の開発を進めた。先行する推定法を鑑み、network deconvolutionによるネットワーク推定法およびdifferential regulation analysis (DRA) 手法を実装している。これらを用いて、シロイヌナズナのAtGenExpressデータセットに適用し、その有用性評価および統合手法の開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は引き続き、ディファレンシャル共発現とネットワーク統計量に基づく調節ネットワーク推定法の開発を進める。ネットワーク推定の際、 (A) 相関係数ベース (B) 情報理論ベースの計算アルゴリズムを利用可能にし、統合手法の開発に利用する。最終的には、植物の遺伝子発現調節ネットワークの理解を進め、作物収量の増大や有用物質生産能力の向上に役立つin silicoな遺伝子発現調節ネットワーク推定法へと発展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表や研究集会、実験検証用にAffymetrix GeneChipマイクロアレイの購入費用を予算計上していたが、in silicoデータ解析手法の開発に集中して時間を割いたため、当該助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度改めて実験検証用にAffymetrix GeneChipマイクロアレイの購入費用およびサーバ用計算機の購入費用として使用する。
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