研究課題
ファイトプラズマ(Phytoplasma asteris)はヨコバイ等の昆虫により媒介される、幅広い植物の篩部細胞内に寄生する病原細菌であり、世界各地の農業生産に大きな被害をもたらしている。これまでに全ゲノム情報解読により、既知の病原性因子(エフェクター。主に分泌タンパク質)のホモログを持たないことが明らかになっている。近年、病徴に関わるエフェクターとしていくつかの分泌タンパク質が報告されているが、感染性に関わるエフェクターは発見されていない。本研究では、細胞内寄生細菌であるファイトプラズマが、従来のタンパク質型エフェクター以外にも、小分子RNA型エフェクターを持ちそれらが植物のRNAサイレンシング系に取り込まれ、撹乱作用を発揮することでファイトプラズマの感染成立に関わる可能性を調べることを目的として実験をおこなった。実際にファイトプラズマが発現するRNAを調べることを目的として、ファイトプラズマのゲノム配列情報をもとに転写起点を網羅的に解析した。その結果、ゲノム上の様々な位置からRNAが転写されることが予測された。ゲノム上の転写起点配列を詳細に解析することにより、ファイトプラズマの転写制御系についてもその一端を明らかにした。これらの知見は、いずれもファイトプラズマに関しては初めてとなる新たな知見であり、ファイトプラズマの遺伝子および小分子RNA型エフェクターの発現制御の解明に寄与すると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
これまでファイトプラズマの転写に関してはほとんど知見がなく、どのような発現制御が行われているのかは不明であった。本研究により、転写起点やその配列を詳細に解析調べることで、ファイトプラズマの転写制御系についてその一端を明らかにし、遺伝子および小分子RNA型エフェクターの発現制御の解明に寄与する知見が得られた。
前年度までに得られた転写制御に関する知見を考えると、ゲノム上の多くの部分から遺伝子および小分子RNA型エフェクター候補となるRNAが発現していると考えられる。今後は、これらの制御に加えてその機能に焦点を当て、解析を進める予定である。
高額な消耗品類の購入を次年度に予定しているため。
当該研究費は、基本的には実験のための消耗品の購入に充てる予定である。高額な機器の購入予定は無い。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
The Plant Journal
巻: 78 ページ: 541-554
10.1111/tpj.12495
FEMS Microbiology Letters
巻: 361 ページ: 115-122
10.1111/1574-6968.12620
Scientific Reports
巻: 4 ページ: 7399
10.1038/srep07399