研究課題/領域番号 |
26850028
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
出崎 能丈 明治大学, 農学部, 助教 (80711647)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 植物免疫 / キチン / CERK1 / MAMP / ユビキチン |
研究実績の概要 |
本研究課題では、我々が同定したシロイヌナズナキチン受容体CERK1の相互作用因子であるユビキチンリガーゼPUB4のキチンシグナリングにおける機能を明らかにすることを目指している。また近年、ユビキチン化を介した受容体の量的、局在制御の重要性が示唆されているが、我々はCERK1が生体内でユビキチン化修飾を受けることを明らかにしており、これに関わるユビキチンリガーゼの同定やそのユビキチン化の意義についても解明を目指している。 本年度は、まずPUB4の相補実験を行った。プロモーター領域を含むゲノム断片を形質転換した個体を作出し、表現型の復帰を検討したところ、これまでのpub4変異体を用いて得られてきた活性酸素生成とカロース蓄積が低下し、MAPKの活性化と防御応答関連遺伝子誘導が亢進するという表現型は、PUB4の変異に由来することが確認された。また病原菌に対する抵抗性検定を実施した結果、カロース蓄積による物理的障壁が抵抗性に重要と考えられる真菌に対しては正に機能し、一方で細菌抵抗性には負に寄与することが示された。さらに昨年度新規に計画した植物ホルモンの分析を行った結果、一部のホルモンで変動が確認され、これがpub4変異体で表現型が正負に分かれる原因となることが示唆された。 また生化学的な機能解析ではCERK1からPUB4へのリン酸化修飾に関し、質量分析によってリン酸化部位の同定を試み、複数のリン酸化部位が同定された。また今後の解析に必要となるin vitroユビキチン化アッセイ系の確立に成功した。 CERK1のユビキチン化による量的制御を解析するために、CERK1特異抗体による内在性のCERK1タンパク質の検出を試み、これに成功した。さらに、局在制御解析を行うための蛍光タグ付きCERK1のコンストラクトに関して検討を進め、現在、形質転換作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画に基づき研究を進め、おおむね期待通りの結果を得ている。 変異体を用いた生物学的機能評価によって得られた知見は、ゲノム断片を再導入した相補個体によって、PUB4に起因することが示された。当初の計画になかったホルモンの一斉分析によって、機能を考察する上で重要と考える予備的な知見を得るに至っており、今後この裏付けを定量PCRなどで進めて行く準備も進んでいる 生化学的な機能評価ではCERK1によるPUB4へのリン酸化部位が同定され、このリン酸化によるPUB4の活性制御が強く示唆されている。さらにin vitroユビキチン化アッセイ系の構築に成功しており、今後PUB4リン酸化のユビキチン化活性に与える影響の評価が進むと期待される。 これまで難航してきた、CERK1特異抗体によるシロイヌナズナ内在のCERK1の検出が可能となったことから、今後キチン処理による量的制御の解析が進むと考えられる。また蛍光タグ付きCERK1を発現する形質転換体の作出も順調に進んでおり、今後このコンストラクトがCERK1としての機能を保持していることを確認した上で、解析が進められると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実施計画に基づき研究を遂行する。 まず、PUB4に関しては植物ホルモンの変動に関して、再現を得ることと同時に定量PCRによるマーカ遺伝子解析を行うことで裏付けを取り、PUB4のキチンシグナリングにおける役割を明確化する。またここまでの知見の早期とりまとめを行う。 CERK1によるPUB4のリン酸化に関しては質量分析の結果、リン酸化によるPUB4の活性化が強く示唆されてきた。すでに構築したin vitroユビキチン化アッセイ系を用い、リン酸化状態および非リン酸化状態のPUB4のユビキチン化活性に与える影響を評価する。さらに同定されたリン酸化部位を変異したコンストラクトの構築を進め、これらの部位と機能の関係性について検討していく。またin vitroユビキチン化アッセイ系が構築できたことから、CERK1を直接ユビキチン化するPUBの探索を進める。 CERK1ユビキチン化やその意義に関しては、CERK1抗体による内在性のCERK1の検出が可能となっており、まずはキチン処理を行ったシロイヌナズナにおけるCERK1の量的変動について評価する。加えて作出が進んでいるタグ付きCERK1を発現する個体を用いることで、キチン処理時のユビキチン化CERK1量の変動およびそのユビキチン鎖の種類について特異抗体を用い解析を進めて行く。また動態解析に関しては、現在形質転換体の作出を進めている。早期のこのコンストラクトが生体内で正常に機能することを示し、動態解析へと進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の実験系を効率的に利用ができた為、想定よりも新規の試薬や消耗品の購入額が少なくなった。 また、難航していたCERK1特異抗体に関しても、新規の作製ではなく、検出条件の検討で改善が見られたことから、費用を控えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度までに実現したin vitroユビキチン化アッセイ系の構築によって、今後これを汎用していくことが想定され、それに伴って高額な試薬の購入回数が増えると予定される。また、リン酸化部位変異コンストラクト作製のために、各種キットおよび酵素類の購入が必要となる。シロイヌナズナ形質転換体を用いた解析では、生化学的評価の為に力価の強い抗体の検討が必要であるほか、薬理学的な解析の為の阻害剤など高価な試薬を用いる必要があり、予算はこれらの購入に充てる予定である。
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