研究課題
Pii (Pii-1とPii-2から成る)によるイネいもち病原力エフェクターAVR-Piiの認識機構について、これまで、AVR-PiiとPiiとの直接的な相互作用は認められないこと、AVR-Piiと特異的に結合するイネのExo70-F3がPii依存的抵抗性に特異的に関与することを示してきた。そこでExo70-F3を中心とした相互作用をyeast two hybrid assay (Y2H)で調べたところ、Exo70-F3とAVR-Piiの相互作用の他に、Exo70-F3とPii-2が弱く相互作用することがわかった。平成27年度はこれらの結果の論文化を行った(Fujisaki et al., Plant J 2015)。また、新規のイネ側関連因子の探索を行い、Y2Hで同定したExo70/Piiインタラクターについては、Pii依存的抵抗性への関与を発現抑制により調べたが、いずれの因子についても関与は認められなかった。次にAVR-Piiの解析をさらに進め、AVR-Piiへのランダム変異導入の影響から、Exo70-F3との結合性と非病原性因子としての機能に相関が認められることがわかった。以上のことから、PiiがExo70-F3を介して、間接的にAVR-Piiを認識する可能性がより支持されたため、PiiがExo70-F3とのより直接的な相互作用を詳細に調べ、Exo70-F3はPii-2の中でもC末端の非保存領域と相互作用することを明らかにした。この領域には基礎抵抗性のnegative regulatorとして知られるRIN4タンパク質にも保存されているNOIドメインのコアモチーフが存在し、そのモチーフに変異を入れると相互作用が破壊されることも明らかとなった。現在はこのコアモチーフを介した相互作用のPii依存的抵抗性への意義について、検証を進めている。
2: おおむね順調に進展している
いくつかの結果については論文化し発表した(Fujisaki et al., Plant J 2015)。研究計画通り、変異体を用いたAVR-Piiの機能解析を進め、Exo70-F3との相互作用と、Pii依存的抵抗性誘導能との間に相関があることを示された。Pii依存的抵抗性に関わる、新規のイネ側因子の探索についても実験をすすめた。ひとめぼれ変異体のスクリーニングについては、明瞭な形質を示す変異株は全てPii遺伝子そのものへの変異が認められた。作用の弱い形質を示す変異株についてはPii遺伝子への変異が認められず、解析を進めているが、稔実率が低く、解析が難航している。一方、Exo70との相互作用が予想されるexocyst complexの構成メンバーやY2Hスクリーニングで同定したイネ因子については発現抑制によるPii依存的抵抗性への機能評価を行った。明瞭な関与を示す新規宿主因子は見つからなかったが、このことから、既知のPiiとExo70-F3、AVR-Pii間のより直接的な相互作用について、より詳細な解析を進めた。その結果、Exo70-F3とPii-2のNOIドメインコアモチーフ相互作用するといった興味深い結果を得るに至っており、研究は概ね順調に進んでいる。
現在、予定通り進捗しているAVR-Pii変異体の機能解析について論文化を目指すとともに、最近の研究で見出されたPii-2のNOI domainコアモチーフとExo70-F3との相互作用のPii依存的抵抗性における意義について、さらに解析を進める。
参加予定学会への参加中止
本研究を論文化するための論文投稿費用および本研究結果を発表するための国際学会参加費
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
The Plant Journal
巻: 83 ページ: 875-887
doi: 10.1111/tpj.12934.