研究課題/領域番号 |
26850035
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
八島 未和(松島未和) 千葉大学, 園芸学研究科, 講師 (60527927)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水田土壌 / 窒素無機化 / 地球温暖化 / 大気二酸化炭素濃度 / 開放系圃場 / 地力窒素 / イオン交換樹脂 / 予測モデル |
研究実績の概要 |
本研究は、モジュール1:地力窒素の給源と微生物を介した窒素動態に与える温暖化影響の解明、モジュール2:温暖化環境下における無機化予測モデルの検証と精緻化を同時並行的に遂行している。 モジュール1:処理1:加温(+2℃)と、処理2:高濃度大気二酸化炭素(+200ppm)、それぞれの組み合わせ処理を行った合計4試験区で水稲栽培を4回繰り返した開放系水田圃場より土壌採取を行い、地力窒素を測定した。地力窒素は1) 30℃、湛水状態で培養した湿潤状態の土壌から供給される無機態窒素量、2) 風乾処理後に1)で測定される無機態窒素量、3) アルカリ処理後に1)で測定される無機態窒素量、の3種類を採用した。結果、長期的な加温処理によって地力窒素量はほぼ変化しないことが確認された。一方、高濃度大気二酸化炭素区においては、いずれの方法によって測定される地力窒素量においても増加傾向が認められ、将来の高二酸化炭素環境が植物の光合成を通して間接的に土壌の地力窒素に対して影響を与える可能性が示唆された。平成27年度においては、この影響が生じるメカニズムの解明、また増加した地力窒素の実態についてさらなる解析を行っていく方針である。 モジュール2:同圃場の窒素無機化に関するアーカイブデータ整理を開始した。さらに、予測モデルを樹立するための室内培養を行った。圃場における窒素無機化測定方法の簡易化のため、Plant Root Simulator (以下PRS)プローブ(イオン交換樹脂膜が装着されたペグ状の器具)の使用について検討を開始した。平成26年度に行った予備実験においては、過去に適用例が限られていた水田土壌において、公定法の結果とPRSプローブによって測定されたavailable mineral Nの量が有意に正の相関関係を持つことが分かった。平成27年度においては、PRSプローブを圃場において試用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度において、モジュール2で予定していた周年開放系温暖化施設における窒素無機化量の圃場データ採取について、準備不足のため、行うことが出来なかった。よって、圃場データ1年分について欠如が生じてしまった。しかし、平成27年度においてはデータ採取の準備が万端に整っているため、当年データは回収が可能であると考えている。また、圃場データ採取が出来なかった分、アーカイブデータの回収、室内培養によるモデル樹立のプロセスは順調に進めることが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度において、モジュール1では、周年開放系温暖化施設において、温暖化と高濃度大気二酸化炭素条件に影響された窒素無機化量の実測データ採取を行う。この際、茨城県つくばみらい市に設置されているFree air CO2 enrichment(FACE)圃場からサンプル採取を行う。平成26年度の結果より、単なる温暖化では地力窒素はあまり変化せず、高濃度二酸化炭素条件下で増加することが示唆されたが、そのメカニズムの解析、また増加した地力窒素の実態についてさらなる解析を行っていく必要があると考える。このため、アーカイブ土壌サンプルを入手し、有機物含有量や有機物の存在形態などの分析を検討している。 モジュール2では、平成26年度に行った室内培養試験の結果を解析し、窒素無機化モデル式を樹立する。さらに、予測精度の検証を行う。これに必要な準備は平成26年度までにほぼ整えられている。
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