研究課題/領域番号 |
26850037
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤原 崇志 名古屋大学, 生命農学研究科, 研究員 (50724499)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 亜鉛 / 亜鉛輸送体 / シロイヌナズナ / ゴルジ体 |
研究実績の概要 |
本研究の対象である亜鉛は、生体内において様々なタンパク質の活性または構造維持に必要な微量必須元素である。植物においてサイトソルから細胞外または各オルガネラの向きに亜鉛を輸送するファミリーの一つにMTP (metal tolerance protein) があり、シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) には12分子種のMTPが存在するが、AtMTP12のみ他のMTPメンバーに比べて分子量が約2倍もある巨大タンパク質である。これまでに研究代表者は、AtMTP12は同じMTPメンバーであるAtMTP5と協同的に亜鉛を輸送すること、また申請時にはAtMTP12は小胞体に局在すると考えられていたが、その後の研究によりAtMTP12はゴルジ体に局在することを明らかにしている。 今年度はAtMTP12とAtMTP5が複合体を形成し得るのかを調査するため、シロイヌナズナ葉肉細胞プロトプラストを用いてBiFCを行った。その結果、AtMTP12とAtMTP5は相互作用を示し、AtMTP12/AtMTP5複合体がシスゴルジに局在することが明らかとなった。このことは、AtMTP12はシスゴルジにおいてAtMTP5と複合体を形成し、シスゴルジ内に亜鉛を輸送していることを強く示唆している。また、ゲノム配列からAtMTP5にはスプライシングバリアント (AtMTP5t1, AtMTP5t2) が存在することが示唆されており、酵母の実験系ではAtMTP5t1のみがAtMTP12と協同的に働くが、本研究によりAtMTP5t1、AtMTP5t2共にAtMTP12と相互作用できることが示された。AtMTP5t2ではC末端の一部が欠失していることから、この領域がAtMTP12/AtMTP5複合体の亜鉛輸送に必須であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究によって、AtMTP12とAtMTP5が複合体を形成して亜鉛を輸送することが明らかとなり、論文採択まで辿り着くことができた。また、AtMTP12の植物における役割を調査するための実験準備も進行しており、おおむね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、AtMTP12およびAtMTP5の組織特異的発現解析、AtMTP12/AtMTP5複合体の亜鉛輸送活性解析、そしてAtMTP12遺伝子破壊株を用いた表現型解析を中心に行う。 組織特異的発現については、今年度作製した植物体を用いて解析を行う。亜鉛輸送活性解析については、AtMTP12/AtMTP5の亜鉛輸送を定量的に評価するため、野生株とAtMTP12遺伝子破壊株からミクロソーム画分を調製し亜鉛輸送活性を調査する。実験が希望通り進展しない場合は、他の生物種で異種発現を試みる。表現型解析については、これまでに見られた表現型が培地中の亜鉛濃度を変化させることでどのように変化するのかを観察し、AtMTP12の役割を検討する。
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