研究課題
本研究の対象である亜鉛は、生体内において様々なタンパク質の活性または構造維持に必要な微量必須元素である。モデル植物であるシロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) では、約10%ものタンパク質が亜鉛と結合すると予測されていることから、細胞内に取り込まれた亜鉛は各細胞内小器官に分配されると考えられる。植物においてサイトソルの亜鉛濃度を減少させる方向に亜鉛を輸送するファミリーとしてMTP(metal tolerance protein)ファミリーがあり、これまでに研究代表者は、A. thalianaのMTP12 (AtMTP12) がシスゴルジに局在すること、シスゴルジでAtMTP5と複合体を形成すること、さらにAtMTP12/AtMTP5複合体が亜鉛輸送体として機能することを明らかにしている。本年度は、AtMTP12およびAtMTP5遺伝子の発現様式を明らかにするため、40日齢のシロイヌナズナの各器官からmRNAを調製しqRT-PCRを行った。その結果、両遺伝子は植物体で一様に発現しており、その発現量もほぼ同等であった。さらにAtMTP12のプロモーターGUS解析の結果から、AtMTP12遺伝子が葉の周縁部やトライコームの基部の細胞、根の成熟領域で強く発現することを明らかにした。また、亜鉛結合サイトと予測されるアミノ酸残基はAtMTP12にのみ保存されていることから、この残基をアラニン置換した変異型AtMTP12とAtMTP5をニワトリBリンパ細胞に導入したところ、亜鉛輸送能が完全に消失した。このことから、AtMTP12のみが亜鉛結合部位を形成していることが示唆された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Biochemical Journal
巻: 473 ページ: 2611-2621
10.1042/BCJ20160324