ミミズ、シロアリ、ヤスデなどの土壌生態系改変者は土壌物理環境を改変することで、他の生物への資源供給に影響を及ぼしている。本研究は、土壌生成の本質である岩石・鉱物風化への土壌動物の影響を定量的に評価することを目的としており、「生態系改変者としての土壌無脊椎動物がどの鉱物種に対してどのような風化作用を示すのか?」という問いに、基礎的回答を与えることを目的としている。
本研究では、まず土壌動物による鉱物風化作用に関する研究の現状と課題を明らかにするため、既往の研究のレビューを行った。また、ナイジェリア産のシロアリ塚土壌の試料を用いて、対照土壌との鉱物組成の比較を行なった結果、土壌動物が鉱物風化に及ぼす影響は小さいため、野外調査でその影響を定量的に調査することが難しいことを確認した。他方、熱帯の強風下土壌に多く含まれる遊離酸化鉱物(鉄やアルミニウム)に焦点を当て、シロアリの営巣活動による遊離酸化鉱物の移動・集積が熱帯圏における土壌生成過程で無視できない影響をもつことを示唆した。しかし、遊離酸化鉱物の生成・分解に及ぼすシロアリの影響については詳細を明らかにできなかった。この他、インドネシアの火山灰土壌地帯における野外調査によって、土地利用の変化が土壌動物相の変遷をもたらし、非晶質アルミノケイ酸塩鉱物の含有量に変化を及ぼすことを明らかにした。しかし、この変化に土壌動物がどの程度関係しているかについては十分な知見を得ることはできなかった。実験室内におけるマイクロコズム試験はミミズで実施したが、鉱物種の入手・作製が思うように進まず、また、ミミズの飼育にも苦心し、思ったような進展が得られなかった。今後の課題としてフォローアップしていきたいと思う。
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