研究課題/領域番号 |
26850045
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 肇 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50549269)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオカソード / 電気化学的メタン生成 / バイオ電気化学的システム / メタン菌 |
研究実績の概要 |
バイオカソードにおける電気化学的メタン生成(EM)反応の触媒機構の理解のため,同反応の触媒能を持つ微生物系のメタゲノム情報の解析を行った.特に, EM反応の数理モデルを構築するためには,二つの反応経路の触媒能に寄与している微生物種をそれぞれ特定し,それら微生物種のバイオカソード上での動態を解明する必要がある.そこで,バイオカソード上に集積された微生物群のメタゲノム情報の解析により,触媒能に重要な微生物種の遺伝子レベルでの特定を行っている. 長時間(約2.5月)の定電位 (-0.5 V vs. SHE) での集積培養後,Cyclic Voltammetryにより電気化学的活性が確認されたバイオカソードからDNAを抽出,約100ギガ塩基対(Gbp)のショットガン配列の塩基配列を決定した.その中から60 Gbpのショットガン配列に対し,MetaPhlAnによる系統解析を行った.また,同ショットガン配列をMEGAHITメタゲノムアセンブラーを用いてアセンブルしたコンティグ配列に対し,AMPHORAによる系統解析を行った.それらの結果,メタン生成古細菌Methanothermobacter thermautotrophicus の近縁種由来のゲノム情報の全メタゲノム情報中での優占化が示唆され,同メタン菌種がEM反応の触媒能に重要な役割を果たしていることが示唆された. ところが,Velvetでアセンブリーされたコンティグ配列を解析した結果,上述のM. thermautotrophicus近縁種よりもさらに5倍程度頻出する新規の細菌種の存在が示唆された.同細菌のゲノム配列は,データベース上の他の微生物種の配列との相同性が低く,そのため上記MetaPhlan,AMPHORAによる系統解析では検出されなかったと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気化学的メタン生成を触媒する好熱性バイオカソードに関して、初めてメタゲノム解析を行い、その触媒機構の理解に重要な分子レベルでの知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
現在,バイオカソードで優占化していた上記の新規の細菌種の全ゲノム情報を再構築し,その代謝能とバイオカソードにおける機能の解明を試みている.さらに,全メタゲノム配列からこの細菌種由来の配列を取り除いた上で,Velvetを用いたアセンブリー解析を行う事で, M. thermautotrophicusに近縁のメタン菌種の全ゲノム情報の再構築を試みる予定である. そこで現在,この新規の細菌種の全ゲノム情報を再構築し,その代謝能とバイオカソードにおける機能の解明を試みている.さらに,全メタゲノム配列からこの細菌種由来の配列を取り除いた上で,Velvetを用いたアセンブリー解析を行う事で, M. thermautotrophicusに近縁のメタン菌種の全ゲノム情報の再構築を試みる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はバイオカソード上の微生物の動態解析を行う予定であった.しかし,新規にバイオカソードのメタゲノム解析を行い,得られた配列を解析した結果,これまで予想していなかった微生物の群衆構造が明らかになった.そのため,今後の研究に必須な分子レベルでの知見を得るため,メタゲノムデータのより高深度の解析を行い,その解析の結果を元に当初予定していたin situでの動態解析に取りかかることとした.その計画変更に伴い,次年度使用額が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
電気化学的メタン生成反応の数理モデルのパラメーター取得を目的に,メタン菌のバイオカソードでの動態解析を試みる.具体的には, fluorescence in situ hybridization (FISH)法とreal-time PCR法により,バイオカソード上でのメタン菌種の数を定量,同時に内部抵抗等のバイオカソードの性能との相関を検証する.現在,FISH法とreal-time PCR法の反応条件等の検討を行っている.条件検討完了後,次年度使用額を利用し当該実験を実施する予定である.
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