研究課題/領域番号 |
26850046
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
上村 直史 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50646528)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | beta-アリールエーテル / リグニン / Sphingobium属細菌 / デッドエンド / バクテリア / カルボキシラーゼ / アセトフェノン / 細胞毒性 |
研究実績の概要 |
昨年度までに、Sphingobium sp. SYK-6株におけるbeta-アリールエーテル代謝経路のデッドエンド化合物であるアセトバニロンがカルボキシル化を受けてバニロイル酢酸(VAA)に変換された後、補酵素A (CoA)の付加を経て代謝されることが示された。本研究では、はじめに代謝経路の詳細な同定を行うために、SYK-6株の酵素反応によりbeta-アリールエーテル化合物(GGE)からVAAを調製した。得られたVAAとフェルラ酸CoAトランスフェラーゼであるFerAを反応させた結果、VAA-CoAが生成し、FerAがVAAにCoAを付加できることが明らかとなった。しかしながら、その変換活性は弱く、またferA破壊株がVAA変換活性を保持したことから、VAAのCoA付加にはferAに加えて他のCoAトランスフェラーゼも関与することが示された。一方、アセトバニロンのカルボキシル化を担うacvABCDEF遺伝子群の直上流にはAraC型転写制御因子と相同性を示すORFが存在する。本ORFのアセトバニロン代謝への関与を調べるために、遺伝子破壊株のアセトバニロン生育能を測定した。その結果、生育速度が著しく低下したことから、本ORFがacvABCDEFの転写の少なくとも一部を正に制御することが示され、AcvRと命名した。一般にアセトバニロンを含むアセトフェノン類縁体は細菌への細胞毒性を示すことから、AcvRによる転写活性化システムはSYK-6株の代謝能を促進するだけでなく、毒性化合物の蓄積を防ぐためにも重要であることが推察された。また、アセトバニロンカルボキシル化反応の再構成を行うために、acvABCDEF遺伝子群全長をPCR増幅し、発現プラスミドを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アセトバニロン代謝に関わる遺伝子として新たにferAとacvRを見出した。AcvRがアセトバニロンに応答してアセトバニロン変換acvABCDEF遺伝子群の転写を活性化する正の制御因子として機能することを明らかにした。また、acvABCDEF遺伝子群の再構成システムを構築し、次年度の解析準備を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
アセトバニロンカルボキシル化反応の再構成実験を、昨年度構築したシステムを用いて解析を行う。はじめに大腸菌を宿主に用いるが、カルボキシル化活性が得られない場合はPseudomonasや他のSphingobium属細菌に宿主を変更する。アセトバニロンのカルボキシラーゼ反応は、フェノールやトルエン等の化合物で見られる例と同様に、芳香環4位OH基のリン酸化化合物の生成を介すると想定される。そこで、リン酸化中間体の生成とその後のカルボキシル化の両段階に関わる成分をそれぞれ同定する。また、beta-アリールエーテル代謝においてacvRが関わる転写制御システムがアセトバニロン変換以外にも関与する可能性についてDNAマイクロアレイ解析により調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度内にアセトバニロンカルボキシル化反応の再構成実験を開始する予定であり、リン酸化中間体の分離用カラムの購入に予算を確保していた。しかし、acvABCDEF遺伝子群の転写制御因子であるAcvRの解析に注力し、再構成実験については発現系構築の段階で研究を留めた。これらのことから、余剰金を次年度におけるカラム購入用に充てることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
再構成実験において必須となるリン酸化中間体の分離用カラムを購入する。また、微生物培養と化合物分析の頻度が前年度より増大すると見込まれるため、培地と液体クロマトグラフィー関連の消耗品を前年度以上に購入する予定である。DNAマイクロアレイ解析については以前に購入した分を利用する。
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