本研究では、分裂酵母のEcl1 familyタンパク質による寿命延長メカニズムの解解明を目指し、特にその金属との関連において重点的に解析を行った。本計画では、具体的に以下を目指していた。 (1)Ecl1 familyタンパク質の金属結合の有無を調べる。 (2)Ecl1 family遺伝子産物のタンパク質3次元構造を決定する。 (3)Ecl1 familyタンパク質の減数分裂・有性生殖に対する影響を調べる。 それぞれの成果を次にまとめた。(1):Ecl1タンパク質が亜鉛と結合することを明らかにした。この亜鉛結合はEcl1 familyタンパク質の保存されたシステインが重要であり、このシステインをセリンに変換したタンパク質では、亜鉛結合は見られなくなり、Ecl1タンパク質の高発現による表現型も見られなくなった。(2):Ecl1 familyタンパク質の3次元構造を決定することは残念ながらできなかった。Ecl1タンパク質は高濃度で存在するとき、原因不明の自己分解を起こす。精製したEcl1タンパク質のみでこの分解の現象が見られることから、Ecl1タンパク質にプロテアーゼ活性があるのではないかと予想している。事実、Ecl1 familyタンパク質のある領域の配列は金属プロテアーゼのドメインと類似性を示すことが分かっている。(3):分裂酵母が亜鉛や鉄などの環境中の金属量に応答して有性生殖を起こすことを明らかにし、その応答にEcl1 family遺伝子が中心的な働きをすることを証明することができた。
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