研究課題
本研究ではアーキアにおけるmyo-inositol kinaseの生理学的役割の解明を目的として研究を行った。初年度および2年目までには、本酵素がinositolの6つのヒドロキシル基の内3位をリン酸化し、inositol 3-phosphate(Ins3P)を生成することを明らかにした。Ins3Pはヒートショックなどに対応するための適合溶質の生合成基質になり得る。また、超好熱性アーキアThermococcus kodakarensisにおいて本酵素をコードする遺伝子の破壊株を作製・解析したところ、解糖・高温条件(90℃)で増殖が悪化すること、および熱変性したタンパク質の折り畳みに寄与し得るprefoldinの転写量が増加していることを明らかにできた。また、本遺伝子の発現量が高温条件下の培養で亢進することも明らかとなった。これらのことから、本酵素は高温ストレス適応機構に寄与していることが示唆された。最終年度は、本機構の分子メカニズムの解明のため、メタボローム解析を中心に研究を進めた。まず宿主株および本遺伝子の破壊株を上記の増殖に差が出る条件で培養し、各細胞から、適合溶質を含む化合物群を抽出した。抽出化合物群のNMR解析の結果、宿主のみで大きくなるケミカルシフトが見出された。これはserineである可能性も考えられたため、serine生合成および代謝経路の解明を進めたが、本酵素とは異なるkinaseが機能していることが明らかとなった。そこで、宿主特異的に検出される化合物の同定を目指し、抽出化合物群のHPLC解析を進めた。その結果、宿主株で特異的に検出されるピークを見出すことができた。その化合物の同定を進めた結果、200-210 nm付近に吸光を示すことが分かり、またLC-MS解析によってその分子量を同定できた。さらに、HPLCによる精製条件を確立し、精製化合物のNMR解析を行った。その結果、本化合物はリン原子を含むことが示唆された。今後、本化合物の構造決定を行い、論文を作成する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Nature Communications
巻: 7 ページ: 13446
10.1038/ncomms13446