研究実績の概要 |
逆転写反応における非特異的増幅抑制のためには, DNA/RNA から成るミスマッチを認識できるタンパク質が必要である。そのような活性を持つ新規タンパク質の同定とその詳細な分子機能解析を目的とした。 One Step RT-PCR への応用を考え, 熱に安定である好熱菌由来の機能未知タンパク質の中から,目的の活性を持つタンパク質のスクリーニングを行った。高度好熱菌丸ごと一匹プロジェクト(http://www.thermus.org/j_index.htm)のデータベースにおいて,精製法が確立・公開されているタンパク質の中から,複数の核酸結合ドメインを持ち, なおかつ多量体を形成するものを候補タンパク質として調製し,機能解析を行った。その結果, 機能未知タンパク質 LLBP が耐熱性および基質特異性ともに目的に合致するタンパク質であることが分かった。このタンパク質を利用することで,PCR における非特異的増幅を抑制できること, また, 誤対合したプライマー由来の逆転写を抑制できることを見出した。後者の効果は DNA/DNA ミスマッチ認識タンパク質である MutS では得られないことを確認し,LLBP の持つ DNA/RNA ミスマッチ認識能が逆転写における非特異的増幅抑制に重要であることが明らかとなった。 この新規タンパク質の DNA/RNA 結合活性には NADH が影響することを発見した。NADH によって DNA/RNA への結合は最大で 1/1000 程度にまで抑制された。今後, NADH 依存的な活性調節によって, このタンパク質を用いたアプリケーションをさらに改善できる可能性がある。
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