研究課題/領域番号 |
26850053
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 昭介 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (80610766)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポリエチレンテレフタレート / モノヒドロキシエチルテレフタレート / ゲノム / トランスクリプトーム / エステラーゼ / ブレビバチルス |
研究実績の概要 |
本研究申請は、小田らによって世界に先駆けて自然界から分離されたPoly(ethylene terephthalate) (PET)分解菌より見出した2種の新規酵素であるPET加水分解酵素(PETase)、mono(hydroxyethyl)terephthalate (MHET)加水分解酵素(MHETase)の機能同定、PET分解に関与する新たな分子群の同定、タンパク質結晶構造解析、及び機能向上を目的としたものである。本年度は主に、PET加水分解酵素(PETase)について、検討を行った。本酵素のPETフィルムに対する活性の温度プロファイルでは、本酵素は他のPET分解性の酵素と比べ、耐熱性が低い一方で、ポリマーのモビリティが低い常温帯での活性が格段に高いことが判明した。本性質が、自然界において、微生物がPET分解性を発揮できる一因であると考えている。また、本酵素は、他のPET分解性酵素と比べ、低酵素濃度において活性のピークがあることが判明した。また、本酵素の組み換え型タンパクは通常、大腸菌を発現宿主としている。しかし、可溶性発現効率が非常に低く、種々の解析に制約があった。そこで、グラム陽性細菌であり、分泌発現システムが開発されているBrevibacillusを発現宿主として用いたところ、培養体積あたり約35倍の可溶性タンパク質の獲得に成功した。これにより、今後のタンパク質結晶化を含む種々の解析の加速を期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はPETaseの解析に注力した。その結果、本酵素が、これまでにPETに対し活性があると報告された代表的な3種の酵素と比べ、その活性や基質特異性など酵素学的な諸性質が異なっているという重要な知見を得ることができた。また、本酵素を解析する上で障害となってきた可溶性タンパク質の獲得について大きく改善することができ、今後のタンパク質結晶化や、機能改良スクリーニングを行ううえでの基盤を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
PETaseはタンパク質の安定性が低いことが判明した。本酵素の応用に向け、PETのモビリティが向上する温度帯での安定性が必要である。そこで、耐熱性向上変異体の獲得に向け、ハイスループットなスクリーニング系を構築し、スクリーニングを開始する。またPETase、MHETaseの構造解析に向けた、結晶化スクリーニングを開始する。また新たにPET分解に関与する酵素などの分子群を同定するため、トランスクリプトーム解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はPETaseの酵素解析や発現条件の検討を優先させたため、トランスクリプトーム解析等、高額試薬の購入を必要とする実験を次年度に移行した。
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次年度使用額の使用計画 |
移行させた実験について、速やかに実行に移す予定である。
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