研究課題/領域番号 |
26850057
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
円山 由郷 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (90610296)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アーキア / 染色体タンパク質 |
研究実績の概要 |
超好熱性アーキアThermococcus kodakarensisは、染色体を構成する主要なタンパク質として、histone、TrmBL2、Albaを持つことが知られている。すべての超好熱性アーキアに保存されている転写因子様タンパク質TrmBL2は、染色体上に多量に存在することや、ゲノムDNAを覆って染色体上に線維状の構造をつくることが知られている。本研究では、その生理的な意義を解明することを目指している。 (1)今研究では、TrmBL2がDNAに結合すると、DNAの剛性が増し、DNAをねじる力に対してコイル形成が起こりにくくなる一方、二本鎖の開裂が起こりやすくなる結果を得て論文発表した。 (2)これまでに、TrmBL2破壊株の染色体は、試験管内でDNA消化酵素の作用を受けやすいことを示した。生菌において、TrmBL2に染色体DNAを保護する機能があるかどうかを調べるために、野生株とTrmBL2破壊株に様々なDNA損傷を与えた際の影響を検証している。 (3)Albaは多くのアーキアに保存されたDNA/RNA結合タンパク質である。申請者の研究により、Albaが翻訳後修飾を受けている可能性が示された。今後、この翻訳後修飾の実態にせまる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)TrmBL2が結合することによる、DNAをねじる力に対する影響に関して論文発表した。これは当初研究計画になかったものであったため、全体として当初計画に遅れが生じているが、計画の達成には問題がないと言える。 (2)TrmBL2破壊株に様々なDNA損傷を与えた際の影響を、野生株と比べる計画を進め、予備的な結果を得ている。TrmBL2を相補するプラスミドを作成し、TrmBL2破壊株への導入に成功した。 (3)DNA結合タンパク質Albaの検出および免疫沈降に使用するためのペプチド抗体を作成した。この抗体を用いて、Thermoplasma acidophilumおよびThermococcus kodakarensis 生菌中でAlbaがどの程度修飾されているかを検出可能となった。また、免疫沈降により、Albaを分離し、より詳細に修飾の状態を解析可能である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)TrmBL2抗体による免疫沈降に加えて、Hisタグを付加したTrmBL2を発現する菌株からTrmBL2複合体を精製することにより、TrmBL2と相互作用するタンパク質を同定する。 (2)東洋大学・東端啓貴先生との共同研究として、TrmBL2破壊株および相補プラスミドを導入した株に対する、熱ショックや、UV・MMC・MMSなどのDNAを損傷させる薬剤に対する感受性を比較し、TrmBL2がどのようなDNA損傷から染色体を保護するのかを検証する。 (3)作成した抗Alba抗体を用いて、ウェスタンブロットにより、Albaの翻訳後修飾の程度を確認する。また、抗Alba抗体による免疫沈降を行い、より詳細に翻訳後修飾の状態を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画になかった、DNAをねじる力に対するTrmBL2の効果に関する論文発表を行ったため、全体的に研究計画が予定より遅れている。また、研究計画のうち、TrmBL2タンパク質と相互作用するタンパク質の同定について、当初予定していた抗TrmBL2抗体による免疫沈降の他に、Hisタグによる複合体精製を行うことにしたため、Hisタグ融合TrmBL2タンパク質を発現する菌株を作成した。このため、当初予定より研究の実施時期が遅くなった。また、DNA損傷実験に必要な、TrmBL2相補プラスミド作成に必要な元となるプラスミドの入手に時間がかかったため、予定期間中に研究を終了することができなかった。以上の理由により、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、以下の実験等および研究発表のために使用する予定である。(1)TrmBL2抗体による免疫沈降とともに、Hisタグによる複合体精製を行い、TrmBL2結合タンパク質を明らかにする。(2)DNA損傷実験のための試薬類の費用として使用する。(3)抗Alba抗体による免疫沈降に要する費用、および質量分析にタンパク質解析の費用として使用する。
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