研究課題/領域番号 |
26850061
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀尾 奈央 東京大学, 農学生命科学研究科, 学振特別研究員PD (80726448)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 嗅覚 |
研究実績の概要 |
空腹時に食べ物の匂いを嗅ぐと匂いが強く感じ、食欲が増す、という現象が経験的に知られている。空腹・満腹という摂食状態の変化により匂い感受性が変化している可能性が考えられるが、哺乳類において、生理的な摂食状態変化での匂い感受性調節メカニズムは未だ明らかとなっていない。そこで、本研究ではまず、空腹・満腹状態での匂い感受性調節メカニズムの解明を目的とし、マウスを用いて行動解析を行った。 初年度である今年度は、マウスが嗜好も忌避も示さない匂いを用いて、匂い検知閾値を測定する行動実験である順化・脱順化テストを行った。マウスは空腹・満腹・擬似満腹 (空腹マウスに、血中濃度が満腹マウスと同程度になるようにグルコースを一過性に尾静脈投与したもの) の状態にして実験に用いた。まずは、行動実験とグルコース尾静脈投与を組み合わせた系を確立した。一過性のグルコース尾静脈投与により血中グルコース濃度は投与直後に上がり、その後ゆるやかに下がっていくが、匂い検知閾値をテストする時間の血中濃度が目的の濃度になるように投与濃度を調節した。この系を用いて解析を行った結果、空腹マウスと満腹マウスでは匂いに対する検知閾値が異なったが、擬似満腹マウスでは空腹マウスの閾値と同程度である可能性が示唆された。今回用いた匂いに関しては、空腹マウスと満腹マウスで検知閾値に差があるが、その差は一過性のグルコース濃度の差では説明できず、他に匂い検知閾値を変えるシステムが存在する可能性が考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス行動実験とグルコース尾静脈投与を組み合わせた系を確立することができ、この系を用いて実際に解析まで行って結果を得られたため。
|
今後の研究の推進方策 |
申請当初は、空腹・満腹という摂食状態の変化による嗅覚感受性調節メカニズムと、嗅覚の食欲調節メカニズムの両方を解明する予定だったが、まずは前者の空腹・満腹状態での匂い感受性調節メカニズムを解明することを優先させる。初年度の結果により、マウスにおける匂い検知閾値は行動レベルでは空腹・満腹で差が出ることが明らかとなったため、今後は嗅覚一次神経レベルでも差があるかを解析する予定である。
|