生体内糖質代謝に関与する糖質加リン酸分解酵素(ホスホリラーゼ)によるオリゴ糖合成の収率は極めて高く、産業上有用な酵素になり得る。しかしながら、既知のホスホリラーゼは他の糖質関連酵素に比べて報告例が少なく、今後生産可能なオリゴ糖のバリエーション拡大には、新たな反応特異性を示すホスホリラーゼの発見が必須である。近年ゲノム全塩基配列の解読を目標としたゲノムプロジェクトが様々な生物種を対象に実施されており、今後新規なホスホリラーゼの発見の可能性は極めて高い。本研究では、様々な生物種のゲノム情報を活用して新規なホスホリラーゼを探索し、各種酵素の基質特異性および糖受容体特異性を解明することで、オリゴ糖ライブラリーの構築を試みた。Glycoside Hydrolase Family (GH) 65、GH94、GH130に属するホスホリラーゼ様タンパク質をコードする遺伝子群をPCR法により単離し、大腸菌による異種宿主発現系を用いて調製された組換え酵素群の詳細な機能解析の結果、これまで報告例のない新規なホスホリラーゼを複数発見することが出来た。得られた新規酵素群が触媒するオリゴ糖合成反応を用いた多種多様なオリゴ糖の合成および安価に入手可能な天然糖質を目的オリゴ糖に高収率変換する技術開発にも成功した。これら新規酵素の発見は、当該酵素が関与する新たな生体内糖質代謝機構の解明にも繋がり、生物学的意義からも学術的に重要な研究と評価できる。
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