研究課題/領域番号 |
26850063
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉永 直子 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40456819)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 鱗翅目幼虫 / FACs / TALEN / aminopeptidase N |
研究実績の概要 |
鱗翅目幼虫の中腸で生合成されるFACsは、幼虫の唾液を介して植物の傷口に付着すると、植物体全身でテルペン等の揮発成分の生合成・放出を誘導する。この揮発成分が幼虫の天敵である寄生蜂を誘引することから、FACsは間接防御応答の誘導エリシターであると考えられてきた。その一方で、幼虫体内ではFACsは窒素代謝の効率化に寄与している可能性が示唆されている。そこで、FACs縮合酵素を同定することを目的として、カイコ蛹での候補タンパク質の大量発現を行った。目的とする分子量のタンパク質が得られたことはSDS-PAGE及びウェスタンブロットで確認できたが、精製した酵素の失活が極めて早く、FACs生合成活性は確認されなかった。 そこで、カイコでの有効性が実証されているゲノム編集技術TALENを用いて、目的タンパク質をコードする遺伝子のノックアウトを行った。候補タンパク質はアミノペプチダーゼNのファミリーに属する2種の酵素APN1とAPN4であり、両遺伝子は近傍に存在していたことから、それぞれのシングルノックアウト系統とダブルノックアウト系統、両遺伝子の切断部位間がごっそり欠落したLarge deletion系統の作出を試みた。それぞれ欠失数の異なる複数のミュータントの作出には成功したが、目的のアミノペプチダーゼのノックアウト個体が致死性を示したことから、ホモ系統の作出に予定より2世代多い6世代を要した。また、ホモ系統が病弱であったため、APN4は固定に失敗した。無事にホモ化に成功したAPN1ノックアウト系統の終齢幼虫において、現在、FACs生合成酵素の活性有無を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的酵素遺伝子のノックアウト・ホモ系統が致死性を示したのは予想外だった。このため、ホモ系統の作出に4ヶ月余計に要することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
ホモ化に成功したAPN1ノックアウト系統でのFACs生合成活性の確認を行う。万一、APN1が候補遺伝子ではないことが明らかになった場合には、再度、候補遺伝子の絞込みを行う。また、カイコを用いたTALENは確実である一方で、結果が出るまでに一年近くかかることから、ショウジョウバエを用いたCRISPR/Cas9技術の利用も考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の理由により研究に遅れが生じたことに加え、TALENによるゲノム編集実験での試薬・酵素その他多くの支出を共同研究者に負担して頂いたため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度の成果を踏まえて、今年度はショウジョウバエでのゲノム編集など新しい研究に着手することを想定しており、当初の予算計画より支出が多くなる可能性がある。
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