研究課題
温度は、植物の開花生理に様々な形で作用する。発熱植物ザゼンソウの場合、低温を受容した後、発熱誘導という形で作用を発揮して、氷点下を含む寒冷環境下でも花の体温を20℃前後に維持できる。加えて本植物は、温度受容から発熱応答に至る一連の反応が迅速に進むため、優れた温度センサーをもつことが示唆されてきたが、温度受容に絡む分子機構は依然として不明である。そこで本研究では、最近シロイヌナズナで見出だされた「クロマチンサーモスタットモデル」がザゼンソウにおける迅速な温度受容機構に適用できるのではないかと考え、本モデルを基にザゼンソウの温度受容と発熱応答をつなぐ新規の転写因子を同定し、当該転写因子を中心とした分子ネットワークの解明を目指している。本研究ではまず、ザゼンソウ目的遺伝子の5'上流配列をStraightWalk法により増幅後、pZerOベクターに挿入してインサート配列を解析した。その結果、当該遺伝子について約1kbの上流配列を取得することに成功した。取得した上流配列の解析について、MEME(Multiple Em for Motif Elicitation Ver. 4.9)、PLACE (A Databasen of Plant Cis-acting Regulatory DNA Elements)を用いた解析を行った。その結果、解析した1フラグメントにおいて出現頻度の高い配列が見出だされた。また、シロイヌナズナオルソログ遺伝子上流配列と取得した1kb目的遺伝子上流配列の比較を行ったところ、シロイヌナズナにおいて温度依存的に機能する転写因子が結合する部位と開始メチオニンを含む約500bpの領域において約51%程度の高い相同性が確認された。以上のことから、本研究で解析したザゼンソウ遺伝子の上流領域は、温度依存的な細胞内生理に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当該年度において、目的遺伝子の上流配列を決定することができ、また、シロイヌナズナ等との配列比較解析から、温度依存的な細胞内生理に重要な領域が示唆されたから。
温度依存的な細胞内生理に重要であることが示唆された領域と特異的に結合する転写因子等を同定していきたいと考えている。
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Advances in Horticultural Science
巻: 28 ページ: 73-78
Journal of Experimental Botany
巻: 65 ページ: 5257-65
doi: 10.1093/jxb/eru290
http://www.miyazaki-u.ac.jp/ttkikou/en/tt-res/yasuko-ito-inaba-ph-d/