研究課題
温度は、植物の開花生理に様々な形で作用する。発熱植物ザゼンソウの場合、低温を受容した後、発熱誘導という形で作用を発揮して、氷点下を含む寒冷環境下でも花の体温を20℃前後に維持できる。加えて本植物は、温度受容から発熱応答に至る一連の反応が約60分と大変迅速に進むため、優れた温度センサーをもつことが示唆されてきたが、温度受容に絡む分子機構は依然として不明である。そこで本研究では、最近シロイヌナズナで見出だされた「クロマチンサーモスタットモデル」がザゼンソウ花成ホルモン(SrFT)の遺伝子プロモーター領域を介した迅速な温度受容機構に適用できるのではないかと考え、本モデルを基にザゼンソウの温度受容と発熱応答をつなぐ新規の転写因子を同定し、当該転写因子を中心とした分子ネットワークの解明を目指すというものであった。ザゼンソウの持つ優れた温度センサーは、開花後の特定の成長ステージにおいて活発に働くことが示唆されている。本年度はまず、昨年度に引き続き、発熱前の花と活発に発熱する花の比較トランスクリプトーム解析を行った。昨年度の結果では、発熱に関わる候補因子の数が多すぎたため、本年度は、発熱前の花と発熱する花での発現量の違いが顕著であった上位1000遺伝子をターゲットとして、アノテーション解析を行った結果、発熱に主要な役割を持つと考えられる複数の候補遺伝子を見つけることができた。当該遺伝子については、すでに発現の再現性についても確認済みであり、現在、局在および機能の解析を進めている。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Plant. Physiol.
巻: 173 ページ: 524
DOI:10.1104/pp.16.01546
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 29440
doi:10.1038/srep29440