最終年度において、陸上植物が生産分泌するストリゴラクトンの立体異性体について中心に行った。まず、陸上植物の基部に位置するとされるタイ類のゼニゴケ、およびほぼ同時期に誕生したセン類のヒミツリガネゴケからは複数のストリゴラクトンが検出されている。コケ植物より進化したシダ植物のイヌカタヒバ、さらに進化を遂げた裸子植物のクロマツとイチョウからも既知および未知ストリゴラクトンの生産が確認されていた。これらの下等植物からは、ストリゴラクトンの前駆体であるカーラクトンまたはカーラクトン酸の存在が確認され、また、ストリゴラクトンにおいては、すべてorobancholタイプSLのみが確認されている。被子植物では、イネやキュウリはorobancholタイプストリゴラクトン、ワタ、イチゴおよびソルガムはstrigolタイプストリゴラクトン、レンゲについては両タイプのストリゴラクトン生産が確認されている。タバコも両タイプのストリゴラクトンを生産するが、品種間において顕著な量的差異が認められた。バーレー種タバコみちのく1号のstrigolタイプストリゴラクトンとorobancholタイプストリゴラクトンの生産量は同程度であるのに対し、黄色種タバコつくば1号が生産するstrigolタイプストリゴラクトンはorobancholタイプストリゴラクトンの1%に過ぎないことがわかった。これらの現象は、strigolタイプ ストリゴラクトンおよびorobancholタイプストリゴラクトンの生合成経路がそれぞれ個別に制御されていることが示された。
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