根寄生雑草ストライガ(Striga hermonthica)は、ソルガムやイネなどのイネ科植物の根に寄生して、宿主植物から養水分を収奪しながら生育する。そのため寄生された植物では生育が著しく阻害され、穀物の収量は激減する。この養水分収奪メカニズムには、植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)が関与していることが、昨年度の研究までで示唆されていた。しかしデータのばらつきが大きく、再現性が得られていなかった。そこで本年度は「宿主植物ソルガムとストライガ、ABAの関係性を明確にする」を最重要課題として研究に取り組んだ。 ストライガとABAの関係:ストライガの各生育ステージにおけるABA含量を測定したところ、ストライガ種子は発芽刺激物質感知後急激にABAを蓄積し始め、寄生開始1週目から4週目まで宿主より高い濃度を維持していた。また発芽した種子は蓄積量の約4倍量のABAを外部に分泌していた。一方でストライガ個体は宿主植物の約10倍多くABAを蓄積しているにもかかわらず蒸散量は変化せず、また外部から内生量を超えるABAを投与しても蒸散量は低下しなかった。また一般的な植物はABAで発芽が阻害されるが、ストライガ種子はABA処理で発芽が阻害されなかった。これらの結果から、ストライガはABAの感受性が宿主植物より著しく悪いこと、そして生存戦略のためにABAを利用していることが示唆された。 ストライガが宿主に与える影響:ストライガの発芽種子をソルガムの根に摂取した結果、接種後8日目からソルガムの背丈が有意に低下した。また蒸散量は接種後2日目から有意に低下した。このような生育阻害は、1 μMのABAを含む培地でソルガムを生育した場合でも見られた。昨年度までの結果も含め、ABAを介してストライガは植物の根を刺激し、宿主植物の生育を阻害している可能性が示唆された。
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