研究課題
食品に含まれるカロテノイドの消化吸収に対する脂肪酸の影響を解明し、カロテノイドの生体利用性を高める脂質を明らかにすることを目的とした研究をおこなった。ヒト小腸上皮細胞モデル細胞(Caco-2)に対して異なる種類の脂肪酸とカロテノイドで調製した混合ミセルを添加した。その後、細胞に吸収されたカロテノイド量を分析し以下の知見を得た。脂肪酸の鎖長の長さがカロテノイドの吸収に与える影響について検討した。Caco-2細胞を小腸上皮細胞に分化させた後、異なる脂肪酸で調製したカロテノイドを含む混合ミセルを培地へ添加した。添加24時間後に細胞を回収し、細胞中に取り込まれたカロテノイド含量をHPLCによって分析した。その結果、アスタキサンチンは中鎖脂肪酸(オクタン酸)の混合ミセルで細胞への吸収量が高かった。一方、ルテインは長鎖(ステアリン酸)の方が高かった。脂肪酸の不飽和度の違いがカロテノイドの吸収に与える影響について検討するため、炭素数18個で二重結合数が異なる脂肪酸(オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸)で調製したカロテノイドを含む混合ミセルを調製し、細胞への取り込み量を分析した。その結果、アスタキサンチンは不飽和度が低い方脂肪酸の方が、逆にルテインは不飽和度が高い脂肪酸で吸収量が高かった。また細胞実験の結果を動物実験にて検証した。ルテインと中鎖で飽和脂肪酸油脂、長鎖で不飽和脂肪酸油脂を混合した飼料をマウスに投与した。その結果、細胞実験で得られた結果と同様にルテインは長鎖で不飽和度の高い脂肪酸油脂の方が肝臓での蓄積量が高かった。
2: おおむね順調に進展している
ルテインの生体利用性を高める脂肪酸の種類を細胞実験と動物実験で明らかにすることができた。当初予定していた小腸でのカロテノイドの吸収に影響を与えるトランスポーターの発現量については現在分析中である。今後は同様の方法で他のカロテノイドについても検討を進める。
ルテイン以外の極性の異なる食品に含まれるカロテノイド(アスタキサンチン、β-クリプトキサンチン、カプサンチン)の腸管での吸収に対する脂肪酸の影響について、同様の方法で評価を進める。これによりどのような脂肪酸がそれぞれのカロテノイドの吸収を高めるために有効か明らかにする。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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