牛乳乳清に含まれる18kDaラクトフォリン(LP)は、乳幼児下痢症の主因であるロタウイルス感染に対して強力でユニークな感染阻害活性を示す。LPを細胞に1時間作用させた後にウイルス感染を行っても、ウイルスゲノムの転写およびウイルスタンパク質の合成を抑制する。昨年度の研究において本活性に必要となるLP側の基盤構造を検証したところ、O結合型糖鎖の重要性を示唆するデータを得た。本年度は、レクチンを用いた競合感染試験より感染阻害に必要となる詳細な糖鎖構造の特定を試みた。 LPとレクチンを37℃、1時間インキュベートしてLP-レクチン混合液を調製した。このLP-レクチン混合液を細胞へ1時間作用させたのち、接種物を取り除いて細胞をよく洗いウイルス感染を行った。コントロールはレクチンの代わりにPBSを用いることで、レクチン添加がLPの感染阻害に与える影響を調べた。 ハイマンノース・2本鎖複合型・混成型を認識するconAレクチンおよび3本鎖・4本鎖を認識するPHA-Lレクチンでは、コントロールと比較して、レクチン競合によるLPの感染阻害率の低下が見られなかったことから、N結合型糖鎖の活性への関与は低いと考えられた。O結合型糖鎖にみられるT抗原(Galβ1-3GalNAc)を認識するPNAによる競合試験では、予想に反して感染阻害率の低下が見られなかった。 単一レクチンの添加ではLPの感染阻害活性の低下が見られなかったことから、活性に関与する構造として、今回検討できなかったレクチンが認識する糖鎖構造や複数の糖鎖構造が関与している可能性が考えられた。
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