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2014 年度 実施状況報告書

食品由来情動調節ペプチドの新しいシグナル伝達機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26850081
研究機関宇都宮大学

研究代表者

水重 貴文  宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70571008)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード精神的ストレス / ジペプチド / うつ / 不安 / 骨形成タンパク質受容体 / 神経新生 / 海馬 / 神経幹細胞
研究実績の概要

我が国の精神疾患患者数は年々増加しておりこれを改善する機能性素材の開発が期待されている。これまで当研究室では、ジペプチドTyr-Leu (YL)が医薬品に匹敵する強力かつ経口投与で有効な抗不安作用および抗うつ作用を有することを見出した。また、抗不安作用および抗うつ作用の構造―活性相関を検討した結果、N末端の芳香族アミノ酸―ロイシン配列がその作用に重要であることが判明した。

YLの標的受容体をPull-down法を用いて探索したところ、候補受容体として骨形成タンパク質(BMP)受容体タイプ1A(BMPR1A)が検出された。本研究において、YLがBMPシグナルに及ぼす影響をNeuro2a細胞のSmadリン酸化を指標に調べたところ、YL添加による顕著な変化は見られなかった。このことから、YLはBMPシグナルを促進する作用はないことが明らかとなった。現在、YLがBMPシグナルを抑制するか否か検討中である。YLの抗うつ作用にBMPR1Aを介したシグナルが関与しているか否か、RNAiにより、BMPR1A発現を抑制したマウスを用いて検討した。その結果、BMPR1A発現を抑制したマウスにおいては、YLの抗うつ作用が見られなかった。以上より、YLはBMPR1Aを介して抗うつ作用を示すことが明らかとなった。

Fosは様々な細胞で種々の刺激に応答し発現するタンパク質であり、神経細胞での発現は神経活動と関連があるとされる。マウスにYLを投与したところ、海馬Fos陽性神経細胞数が有意に増加し、YLは海馬の神経活動を活性化させることが明らかになった。一方、海馬の神経新生の促進が、抗うつ様行動に密接に関わっていることが報告されている。本研究において、BrdUを用いて海馬神経新生を調べたところ、YL投与により、海馬神経新生が促進することが明らかになった。現在、YLの海馬神経新生促進作用とBMPシグナルとの関連について検討中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成26年度は、YLの抗うつ作用がBMPR1Aを介したものであることおよびYLが抗うつ様行動に関連のある海馬神経新生を促進することについて明らかにし、YLの抗うつ作用メカニズムとして、BMPシグナルと海馬神経新生が重要なキーワードであることを突き止めることができた。それらの関連性について来年度さらに検討する。以上、研究は順調に進展している。

今後の研究の推進方策

YLの抗ストレス作用はBMPR1Aを介した作用であることが明らかになった。しかし、YLがどのようにBMP経路に作用しているのか不明である。そこで、平成27年度においては、まず、BMPR1Aの下流シグナルであるSmadリン酸化を指標にYLがBMPシグナルにどのように作用するか明らかにする。また、YLが神経幹細胞の増殖に対してどのように作用するか、さらにその作用に対してBMPR1Aとの相互作用がどのように関与しているかについて検討する。以上の検討によって、YLの抗ストレス作用のメカニズム解明および新たな抗うつ標的の決定が期待できる。

次年度使用額が生じた理由

研究は報告書のとおり順調に進んでいるが、平成26年度においては各実験の消耗品にかかる予算が予定よりも少なく効率的に実験を行うことができた。余剰分は、平成27年度の研究費用として使用する。

次年度使用額の使用計画

平成26年度余剰分773千円を平成27年度に使用する。したがって、平成27年度分1400千円と合わせて平成25年度は直接経費が2173千円である。使用計画を以下に示す。
生化学実験試薬500千円、生化学実験器具200千円、細胞培養試薬250千円、細胞培養器具50千円、行動実験器具70千円、実験動物750千円、印刷費23千円、国内学会旅費200千円、論文投稿費用30千円、英文校閲50千円、図書50千円

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Orally administered δ opioid agonist peptide rubiscolin-6 stimulates food intake in aged mice with ghrelin resistance.2014

    • 著者名/発表者名
      Miyazaki Y, Kaneko K, Iguchi S, Mizushige T, Kanamoto R, Yoshikawa M, Shimizu T, Ohinata K.
    • 雑誌名

      Mol Nutr Food Res

      巻: 58 ページ: 2046-2052

    • DOI

      10.1002/mnfr.201400100

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2016-06-01  

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