研究課題
本研究は、運動や不活動が食肉のおいしさに及ぼす影響について、メタボローム解析による定量的な評価を軸として、物性面(硬さ・保水性)、筋線維タイプ変化の解析も加え、明らかにしようとするものである。骨格筋は運動により、その質と量をダイナミックに変化させることが分かっているが、この変化が食肉としての特性にどの程度影響を与えるかは不明である。また、ブタ・牛などの大型の家畜に定量的な運動を負荷させ条件を検討するのはコスト・管理面で難しい。そこで、本研究では、マウスをモデル動物として最適な運動量を解析し、それをブタに還元することで、「運動」と「食肉の美味しさ」について、物質・物性面での相関関係を明らかにし、運動が食肉の美味しさにどのような影響を与えるのかを定量的に解析することを目指す。平成26年度は以下の研究を行った。1)マウスに運動負荷させた後の理化学的特性の変化マウスに週3回30分の遊泳運動を負荷した後、筋持久力及び、肉の硬さの指標である剪断力価を測定した。その結果、運動を負荷していないコントロール群と比較して、運動負荷群において、有意な筋持久力の増加、有意な剪断力価の低下が認められた。したがって、運動負荷により運動能力がアップし、肉質も軟らかくなることが示唆された。2)運動特性の大きく異なる2種の筋組織を用いたメタボローム解析遅筋を多く含むsoleusは持久的な運動に使われ、速筋を多く含むEDLは瞬発的な運動に利用されることが知られている。運動特性の顕著に異なる両者をメタボローム解析に供した結果、乳酸、ピルビン酸などの解糖系由来の代謝物がEDLで有意に多く、クエン酸、アセチルCoAなどTCA回路に利用される代謝物がsoleusで有意に多く検出され、両者の性質の明確な違いが各代謝物量の違いからも確認された。
2: おおむね順調に進展している
運動特性および筋線維タイプが顕著に異なるsoleus(遅筋), EDL(速筋)をサンプルとしてメタボローム解析を行い、多くの代謝物に差があることを定量的に見いだせたことは次年度につながる成果であったと考えられる。
マウスに複数の運動強度と運動時間を設定し、遊泳運動トレーニングを負荷する。その後、大腿四頭筋の剪断力価といくつかの代謝物レベル、そして筋線維タイプ組成を電気泳動で評価し、最も遅筋タイプが増加する運動条件を見いだす。また、本年度は、ブタを用いた検討も並行して推し進めていく。舎飼いのブタと運動量が多いと思われる放牧飼育のブタ(系統は同一)の肉質の理化学的特性の解析及び官能評価テストを行う予定である。
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