研究課題
昨年度は、二次元電気泳動の条件最適化を進め、ケルセチン処理(嫌気条件下、3時間培養)により抗炎症作用が増強されるB. adolescentis JCM1275T株と変動しない1251株のタンパク質を比較した結果、統計的に有意な差が見られるスポットを見出した。今年度は、二次元電気泳動の回数を重ねて有意差のあるスポットをさらに探索し、計6つの変動スポットを見出した。それらは、(1)両株で同程度存在するがケルセチン処理によって1275T株でのみ変動する、(2)1275T株と比較して発現量が少ない、(3)1275T株より1251株で多く発現している、(4)両株で同程度存在してケルセチン処理によって同様に変動する、といった特徴を示し、やはり1251株はケルセチン応答性を有しているものの、何らかの機構が欠損していると考えられた。またこれらのスポットのうち、CBB染色で目視できるものについてLCMS分析によるタンパク質同定を試みた結果、短鎖脂肪酸合成にかかわるlactate dehydrogenaseとacetate kinaseや、糖代謝にかかわるbeta-fructofuranosidase、酸化還元酵素のaldo/keto dehydrogenaseとketo-acid reductoisomeraseであることが明らかとなった。特に酸化還元酵素は、ケルセチン処理した1275T株で有意に増加し、また、1275T株と比較してケルセチン処理に関係なく1251株で低発現であったことから、抗炎症作用との関連性が強く示唆された。一方、糖代謝や短鎖脂肪酸合成にかかわるタンパク質の変動は、ビフィズス菌の生理機能を変化させている可能性が考えられ、今後詳細な解析を進めることにより、非栄養成分が腸内有用菌を介して我々宿主の健康にどのような影響を与えているか解明する重要な手がかりが得られると期待される。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の研究実施計画では、二次元電気泳動で有意に変動していたスポットを切り出してプロテオーム解析を行うことであった。したがって、現時点での進捗は計画通りであり、次年度の計画へスムーズに移行できると考えている。
平成28年度は、同定したタンパク質のいくつかについて機能解析を試みる。とくに糖代謝や短鎖脂肪酸(酢酸および乳酸)の合成にかかわるタンパク質に変動があったことから、GCMS分析により短鎖脂肪酸量を測定する。酸化還元酵素については、どのような代謝経路に関与するか文献やデータベースより推定したのちに、大量精製の手法を検討する。また、ケルセチンと同様に1275T株の抗炎症活性を増強する他のポリフェノールをいくつか見出しており、それらについてもタンパク質の変動を二次元電気泳動で確認し、ケルセチンとの比較を行う。それにより、抗炎症活性にかかわるタンパク質の絞り込みができると期待している。
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