研究課題
食品には、中医学における「四気」に表されるように身体を温めたり冷やしたりする働きがあるとされてきたが、経験的な知見が多く、実際の体温変化や作用機序については未だ不明な点が多い。本研究は食品の摂取による体温変化およびその作用機序の解明を目的としている。本研究では温度受容TRPチャネルに着目し、温度受容TRPチャネルを活性化する食品成分の摂取が体温に与える影響の解析および食品成分摂取による体温変化におけるTRPチャネルの関与の解明を目的とした。生体の自律性体温調節は外気温や個人の体調など様々な要因の影響を受けるため、ヒトにおいて詳細な解析が難しく、実験動物を用いて解析を行った。これまでにTRPV1、TRPA1、TRPM8のアゴニストとなる食品成分の摂取による体温変化にはTRPチャネルが関与することが明らかになっている。本年度は、体温変化を生じる作用効果器へのシグナル伝達機構の検討として、TRPチャネルの作用部位について検討を行った。TRPM8およびTRPA1アゴニストは血中投与においても各TRPチャネルを介して熱産生を亢進させることが明らかになった。また、TRPM8およびTRPA1アゴニスト胃内投与による体温変化は、迷走神経切除により減弱化することが明らかになった。これらの結果は、迷走神経に発現するTRPM8およびTRPA1はそれぞれ熱産生を惹起する体温調節の作用点としての機能を有する可能性を示唆している。これまでに、低温刺激受容体であるTRPM8は皮膚の感覚神経を介して熱産生を亢進させる機能を有することが報告されているが、消化管内の迷走神経に発現するTRPM8と熱産生の関連についてはこれまでに検討されていない。本研究により皮膚表面のみでなく消化管内に発現するTRPM8やTRPA1も体温調節反応を引き起こす作用点として機能することが示唆された。
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