研究課題/領域番号 |
26850087
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
吉村 征浩 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (60455566)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酢酸代謝 / 短鎖脂肪酸受容体 / 筋管細胞 / propionyl-CoA synthetase / プロピオン酸代謝 |
研究実績の概要 |
本研究は分化誘導したL6筋管細胞において、酢酸によるAMPK活性化のメカニズムを解明することを目的としている。 平成27年度は以下の3点について研究を実施した。(1)L6筋管細胞に発現していたミトコンドリア型AcylCoA synthase short chain member (Acss) 3の遺伝子クローニングおよび酵素学的性質の解析(2)L6筋管細胞において酢酸を介したAMPK活性化が及ぼす最終的な下流反応の探索(3)L6筋管細胞におけるGPR43アゴニスト処理によるAMPKの活性化 (1)については、他のAcssファミリーの中で唯一、酵素学的性質などの詳細が明らかとなっていないAcss3の遺伝子クローニング・発現解析を行い、ACSS3は短鎖脂肪酸のうち、特にプロピオン酸に特異性が高く、発現組織は肝臓と腎臓で高い発現を示すことを見出した。(2)については酢酸処理によりL6筋管細胞におけるGlut4およびミオグロビンの発現がAMPKの活性化、MEF2aの発現上昇および核内移行を介して上昇する可能性を見出した(3)については、GPR43のアゴニスト(10 μM)でL6筋管細胞を処理すると、リン酸化AMPKが増加することがわかり、酢酸によるAMPK活性化の経路に、酢酸代謝に伴うAMPの増加以外にも受容体を介する経路がある可能性を示した。 (1)については、Acss3はプロピオン酸代謝に関与する酵素であり、酢酸代謝にはあまり関与しない酵素である可能性があるが、未だ明らかとなっていなかった高等動物におけるプロピオン酸代謝の律速酵素であるプロピオニルCoA合成酵素を明らかにした可能性がある。(2)については、MEF2aは筋分化を促進する因子であり、酢酸により発現が上昇し、核内移行が引き起こされるという知見は、酢酸が筋分化を促し、筋線維数の維持に役立つ可能性を示しており、酢酸がサルコペニアの予防効果を持つ可能性を示唆している。(3)については、酢酸によるAMPK活性化経路にGPR43を介した経路も存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の目的の達成度は60%と評価する。 当初は、分化筋管細胞において内在性GPR43のノックダウンが酢酸のAMPK活性化に影響を及ぼすかを明らかにすることまでが予定であったが、GPR43の発現解析のために必要なWestern Blotで使用することができる抗体が手に入らないため、ノックダウン実験は進まず、GPR43アゴニストによるAMPK活性化の確認にとどまった。しかし、酢酸代謝に重要なACSSファミリーにおいて機能未知なACSS3の酵素学的性質を明らかにでき、ACSS3が現在まで不明なままであった、高等動物におけるプロピオン酸CoA合成酵素の一つである可能性を見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の実験により、L6筋管細胞において、GPR43アゴニストにより、AMPKの活性化が起こることがわかった。平成28年度はWestern Blotで使用できるGPR43抗体の作製を試みる。また、引き続き、GPR43をノックダウンした筋管細胞に酢酸またはGPR43のアゴニストを作用させ、AMPKの活性化、glut4発現量およびMEF2aの発現量、核内移行を解析し、酢酸によるAMPK活性化にGPR43がどのように関与しているかを明らかにし、GPR43の下流因子の解析もカルシウムシグナルの阻害剤や百日咳毒素などを利用して行い、L6筋管細胞において酢酸が引き起こすAMPK活性化のメカニズムの全容解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度で必要な物品を残高では購入することができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は実験消耗品や学会参加のための費用、研究成果報告のための論文作成時の英文校正費として適切に使用することを計画している。
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