研究課題
多発性硬化症モデル(Experimental Autoimmune Encephalomyelitis, EAE)における腸内細菌の影響を検討した結果、Erysipelotrichaceae科の菌株が小腸において抗原特異的T細胞を活性化し、中枢神経系の炎症を促進することが示唆された。これらの結果は、マウス小腸から単離したErysipelotrichaceae科菌株のみを有するモノアソシエイトマウスにおいて確認できた。一方、マウス小腸で優性なLactobacillus属菌株は、中枢神経系の炎症に影響を及ぼすことは無かった。Erysipelotrichaceae科菌株が抗原特異的T細胞を活性化するメカニズムを解析した結果、本菌株は小腸においてserum amyloid A(SAA)およびIL-23発現を誘導することで、抗原特異的Th17細胞のpathogenicityを高めることが示唆された。本菌株は小腸粘膜においてバイオフィルムを形成することで上皮細胞に接着することを確認しているが、このことが上記の炎症促進反応に寄与すると予想される。一方、Erysipelotrichaceae科菌株のみが腸管に定着したモノアソシエイトマウスは、通常の腸内細菌を有するマウス(SPF)に比べ、EAEの重篤度は低い。このことは、Erysipelotrichaceae科菌株だけでなく、他の腸内細菌も複合的に中枢神経系の炎症促進に関与していると考えられる。今後更なる研究で腸内細菌-中枢神経系炎症の関係を紐解くことにより、腸内細菌をターゲットとした多発性硬化症の治療戦略を確立できると期待される。
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Scientific Reports
巻: 5 ページ: 15699
10.1038/srep15699