研究課題/領域番号 |
26850091
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
大槻 崇 国立医薬品食品衛生研究所, 食品添加物部, 主任研究官 (30401011)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 定量NMR / 食品添加物 / 化学物質 |
研究実績の概要 |
食品の品質や安全性の評価に関する分析値の質の保証が国内外で重要な課題となっており,食品中の様々な化学物質に対する信頼性の高い分析法の開発が望まれている.本研究では,食品添加物,食品有害汚染物質,生理活性物質等を対象に定量核磁気共鳴(qNMR)を用いた信頼性が高く,高精度,迅速,簡便な食品中の化学物質分析法を開発することを目的とする.また,開発した方法を市販食品の分析へ応用し,従来法との比較より本法の有効性を明らかする. qNMRによる精密な定量には,対象化合物の定量に用いるシグナルが,食品中の夾雑物のシグナルと完全に分離していることや対象化合物が重溶媒に完全に溶解していることが必須である.そこで,今年度は,まず甘味料や着色料などの食品添加物を中心に1H NMRを測定し,各化合物のスペクトルパターン情報を収集するとともに,qNMRへ適用可能と予想される化合物の選別及び最適な測定溶媒の選定を行った. また,スペクトルパターン情報を収集した化合物のうち,サッカリンナトリウム,サッカリン等についてqNMR測定を行い,スピン-格子緩和時間に基づく照射パルス遅延時間の最適化,精密な定量結果を得るための最適なシグナルの決定,決定したシグナルより得られる定量値の再現性を評価した. さらに, サッカリンナトリウムについてqNMRによる食品中の分析法の確立に関する検討を行った。前処理については,ジエチルエーテルを用いた溶媒抽出法が,加工食品中のサッカリンナトリウムの前処理として有用であることを明らかにした.また,サッカリンナトリウムの使用が認められている清涼飲料水など加工食品7種を対象に,使用上限濃度における添加回収試験を行ったところ,回収率は80%以上,相対標準偏差は10%以下と良好な結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,食品関連物質の1H NMRスペクトルパターン情報等の収集,qNMRの適用性の評価,qNMRを用いた食品中の化学物質分析法の確立を計画していたが,おおむね順調に遂行できたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の計画としては,まず,昨年度検討した加工食品中のサッカリンナトリウム分析法について,室内精度の評価を行う.また,本化合物を実際に含有する様々な市販食品を対象に分析を行い,得られた定量値や分析精度などについて従来法と比較し,本法の有効性を明らかにする. 一方で,昨年度検討した以外の食品添加物や生理活性物質等について,スペクトルパターン情報の収集,qNMRの適用性の評価,qNMRを用いた食品中の分析法の確立に関する検討を継続して実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は,食品添加物を中心に検討を実施した.特に,これらの標準物質は予定していた金額と比べ安価に入手できたため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は,食品添加物のみならず,生理活性物質も含めた検討を実施する予定である.次年度使用額については,測定対象物質の標準物質の購入,分析法の確立に必要な試薬,消耗品,研究成果の発表に伴う支出等に使用する予定である.
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