食品の品質や安全性の評価に関する分析値の質の保証が国内外で重要な課題となっており,食品中の様々な化学物質に対する信頼性の高い分析法の開発が望まれている.本研究では,食品添加物等を対象に定量核磁気共鳴(1H-qNMR)を用いた信頼性が高く,高精度,迅速,簡便な食品中の化学物質分析法を開発することを目的とする.また,開発した方法を市販食品の分析へ応用し,従来法との比較より本法の有効性を明らかにする. 1H-qNMRの精密な定量には,対象化合物の定量に用いるシグナルが食品中の夾雑成分のシグナルと完全に分離していることや対象化合物が重溶媒に完全に溶解していることが必要である.そこで,平成26年度は,甘味料などの食品添加物を中心に1H NMR測定,各スペクトルパターン情報の収集,1H-qNMRへ適用可能な化合物の選別及び最適な測定溶媒の選定を行った.また,スペクトルパターン情報を収集した化合物のうち,サッカリンナトリウム等について1H-qNMR測定を行い定量条件の最適化等を行った.さらに,サッカリンナトリウムを対象に1H-qNMRによる食品中の分析法の確立に関する検討を行い,前処理法の最適化並びに添加回収試験を行った. 平成27年度は,引き続き分析法の妥当性を評価するため,10種の食品を対象に2点濃度で添加回収試験を日内および日間(5日間)で行い,得られた真度,精度(併行精度,室内精度)から本法の性能を評価した.また,サッカリンナトリウムの使用が表示された食品6種を対象に本法と従来法(透析法/HPLC)を比較し,本法は従来法と同等の分析精度で迅速に分析が可能であることを明らかにした.
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