研究課題/領域番号 |
26850098
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阪口 翔太 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員 (PD) (50726809)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ニューカレドニア / 適応進化 / 針葉樹 / RNA-seq |
研究実績の概要 |
ニューカレドニア島は多くの針葉樹が適応放散を遂げた地域として知られているが,その種分化プロセスについては未解明の部分が多い.本研究では,ニューカレドニア島に侵入した後に,蛇紋岩土壌と乾性低木林への適応進化が共通して起きた,ヒノキ科2属(Callitris属とLibocedrus属)に着目し,それらの生態的種分化に関わった適応遺伝子を生態ゲノミクスによって特定することを目的としている. 平成26年度は研究対象種の自生地および域外保全個体から得たRNAサンプルに基づいて,発現遺伝子データを取得し,ニューカレドニア島外の姉妹系統とアミノ酸配列を比較することで自然選択の痕跡を探索した.Callitris属とLibocedrus属では,ニューカレドニア産3種と近縁な姉妹系統がオーストラリアとニュージーランドに分布している.そこで,姉妹系統と島内種を対象として(合計8種),新規にRNA-seq解析を行った.その結果,ニューカレドニア島内の3種間では塩基置換数が限られており,第三紀以降の短い間に種分化が起こったことが明らかになった.その一方で,島外の姉妹系統との間ではある程度のアミノ酸置換が蓄積されたことから,姉妹系統と分化した後に島内で種分化するまでの系統樹における枝に着目し,この枝で非同義置換が集中して起きている遺伝子をスクリーニングした.解析の結果,Callitris属では6,689contigの中から54個の遺伝子が,Libocedrus属では5,072contigから37遺伝子が抽出された.これらの中には無機リン酸トランスポーターなど,ニューカレドニアにおける特殊環境との関連が推察されるような機能をもつ遺伝子が含まれており,島内での種分化前に自然選択の影響を受けた候補遺伝子である可能性が考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はニューカレドニアに渡航して研究対象の全種をサンプリングし,RNA-seq解析まで完了することができた.さらに,研究対象種の大部分がIUCNから絶滅危惧種指定を受けていることから,今年度はCallitris sulcataを対象にして保全遺伝学解析用の集団サンプルを採取し,多型解析用のEST-SSRマーカーを15マーカー開発することに成功した.これにより,当初の計画以上の速度で研究が進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度のRNA-seq解析からニューカレドニア島内における種分化は比較的最近に起こったことが明らかになった.予想よりも種間での塩基置換数が少ないことから,今後は各種複数個体についてRNA-seq解析を行い,集団遺伝学的アップローチから種分化過程における適応遺伝子を探索していくこととする.
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