研究課題
ニューカレドニア島は多くの針葉樹が適応放散を遂げた地域として知られているが,その種分化プロセスについては未解明の部分が多い.本研究では,ニューカレドニア島に侵入した後に,蛇紋岩土壌と乾性低木林への適応進化が共通して起きた,ヒノキ科2属に着目し,それらの種分化に関わった適応遺伝子を特定することを目的とした.そのために研究対象種のRNA-seq解析に基づいて,発現遺伝子データを取得し,島外の姉妹系統とアミノ酸配列を比較することで自然選択の痕跡を探索した.2属において,島外の姉妹系統から分化した後に島内で種分化するまでの系統樹における枝に着目し,この枝で非同義置換が集中して起きている遺伝子をスクリーニングした.結果,Callitris属では54個の遺伝子が,Libocedrus属では37遺伝子が抽出された.これらの中には無機リン酸トランスポーターなど,本島の特殊環境との関連が推察されるような機能をもつ相同遺伝子が含まれていた.一方,本島は多くの針葉樹が種分化を遂げた地域として知られているが,その種分化プロセスについては未解明の部分が多い.そこで,C. sulcataについて集団遺伝解析を実施した.集団の遺伝的多様性は核SSRヘテロ接合度が0.679-0.755と高いレベルが推定された一方で,3つの河川沿いに隔離されている集団間では高い分化度を示した.さらに,河川からの距離・地形変量を考慮した分布予測モデルに基づいて集団間の抵抗距離を計算し,遺伝的分化との関係を調べたところ,単純な地理的距離よりも相関係数が高まった.また,隣接する河川間での遺伝的分化は約3-5,000世代前に起こり,祖先集団からの分化後に集団サイズが減少したことが,動態モデリングから示された.このことから,河川沿いの低地湿性林に分布する本種の集団分化には,複雑な山地地形が隔離要因として重要であったことが示された.
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Applications in Plant Sciences
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Journal of Biogeography
巻: - ページ: -
10.1111/jbi.12919
Scientific Reports
10.1038/srep33930