研究課題/領域番号 |
26850100
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
鍋嶋 絵里 愛媛大学, 農学部, 助教 (10710585)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 木部形成 / ミズナラ / 光合成 / 気候変動 / 安定同位体比 |
研究実績の概要 |
落葉広葉樹林における優占樹種の一つであるミズナラは、孔圏道管とよばれる大径の道管を持ち、一年輪内における早材(孔圏)と晩材(孔圏外)との区別がつけやすい。この孔圏道管の大きさや頻度などについてばらつきを調べることで、木部形成における長期的・短期的変化について知る事ができ、樹木の炭素獲得や炭素利用の変化とそのメカニズムを明らかにする事ができる。北海道の苫小牧演習林で採取したミズナラ成木の木部を用いて年輪幅と孔圏道管の長期変化を調べた結果、孔圏道管が存在する早材の幅が1970年から2004年までの30年間に増加している事が明らかとなった。また、愛媛大学演習林内のミズナラ成木を用いて孔圏道管形成の生理的メカニズムとしての個葉光合成と幹の木部形成の季節変化を2014年の春から夏にかけて調べた結果、これらのミズナラでは木部の早材を形成し終わった後に葉の光合成能力が最大化することが示された。この結果は木部の安定同位体比の季節変化の結果とも合致しており、早材形成は葉での光合成産物ではなく貯蔵養分に依存することがどちらからも示唆された。これら全ての結果をあわせると、ミズナラは前年の光合成産物である貯蔵養分を主な炭素資源として大径の孔圏道管(早材)形成を行い、光合成が最大化する夏前には早材形成を終了する。よって、前年の光合成期間である前年夏の気象条件および当年の早材形成期間である当年春の気象条件によって早材形成が影響を受けると考えられ、これらの気象条件が長期的に変化することで木部形成が長期的に変化している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度中に予定していた個葉光合成測定および木部構造の顕微鏡観察は終える事ができ、木部構造の長期変化に関する結果が論文として受理された。一方、予定していた木部の材密度の測定および青森でのサンプリングは、測定を行う機関やサンプリング場所が遠方のため日程調整がうまくいかず、終える事ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
地理変異としてはこれまでにサンプリングを終えている北海道二地域と愛媛の比較から明らかにする。北海道と愛媛とでは遺伝的に異なる事がすでにわかっており、地理変異を明らかにする上で問題ないと考える。今後はすでに採取した試料の分析と測定を中心に行い、木部の安定同位体比や材密度について長期的・短期的変化と場所間での違いを明らかにする。これまでの結果については論文作成作業を同時に進めていき、測定が終わり次第、得られた結果を学会や論文として発表する。
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