研究課題/領域番号 |
26850105
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研究機関 | 国立研究開発法人 森林総合研究所 |
研究代表者 |
藤井 一至 国立研究開発法人 森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (60594265)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 土壌酸性化 / 土壌有機物 / 土地利用変化 / 熱帯林 |
研究実績の概要 |
火災・伐採後の熱帯林は土地利用が急激に変化し、土壌劣化(土壌酸性化や有機物の減耗)が進行している。そこで、異なる土地利用条件における土壌炭素および酸性度の変動を観測し、有機物量を増加させ酸性化を緩和できる土地利用体系を抽出することを目的としている。 インドネシア東カリマンタン州のムラワルマン大学ブキットスハルト演習林周辺の天然林、マカランガ二次林、アカシア二次林、チガヤ草原およびパームオイル農園において土壌中の有機態炭素の蓄積量、植物体リター(葉・根)の分解速度を観測した。また、土壌酸性化速度および要因を調べるため土壌溶液を採取・分析し、酸性化要因を解析した。 この結果、土壌有機物炭素量はマカランガおよびアカシア二次林で最大となることを発見した。葉リター、根リターともに分解速度はチガヤ草原>マカランガ二次林>アカシア二次林>天然林の順であった。森林の草原化は初期に土壌炭素蓄積量の増加を引き起こすと考えられていたが、草原リターは分解しやすいために長期的な土壌炭素の蓄積量は小さいことが示された。さらに、土壌溶液の解析によって、アカシア二次林では草原条件よりも30年後の土壌pHが低下することを発見した。パームオイル農園では施肥窒素の硝酸化成によって、マメ科樹木であるアカシア二次林では硝酸化成によって土壌酸性化が急速に進行することが示された。以上の結果から、マカランガ二次林が土壌の有機物蓄積と酸性化緩和を両立しうることが示された。 これまでの土壌酸性化に関する研究内容が評価され、日本土壌肥料学会の奨励賞を受賞した。また、日本生態学会では熱帯林の植物・土壌の相互作用に関するシンポジウムを開催し、海外の研究者とともに熱帯土壌の劣化に関する著書を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでにフィールドにおけるサンプル採取を完了し、分析も順調に進んでいる。これによって、熱帯荒廃地の土壌劣化・回復プロセスにおける土地利用条件の解明が進んでいる。これまでの土壌酸性化に関する研究内容が評価され、日本土壌肥料学会の奨励賞を受賞した。また、日本生態学会では熱帯林の植物・土壌の相互作用に関するシンポジウムを開催し、熱帯土壌の劣化に関する著書『大地の五億年』を執筆した。
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今後の研究の推進方策 |
現場で収集したサンプルの分析の終了後、土壌有機物量と酸性化速度の関係を解析・予測し、有機物量を増加させ酸性化を緩和できる土地利用体系を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
見積額と実際の金額に開きがあったため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に用いる試薬購入の一部に充てる。
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