木造住宅の性能は接合部の性能によって大きく変化するため、接合部に腐朽が発生すると住宅の構造性能は大きく低下する危険性がある。木造住宅の中で高い構造性能を要求される箇所では、釘接合部はせん断型で抵抗するように使われ、釘接合部のせん断性能には主材からの釘引抜き性能と木材のめり込み性能が寄与する。そこで、木材に腐朽処理を施して釘引抜き試験および木材のめり込み試験、釘1本で主材と側材を接合した単位釘接合部試験、多数本の釘を用いた釘接合部試験を行った。木材にはトドマツ製材、釘には太め鉄丸釘CN65、腐朽菌には褐色腐朽菌オオウズラタケを用いた。 平成26年度は木材腐朽に伴う釘引抜き性能およびめり込み性能の変化を調べた。釘打ちした木材に腐朽処理をして引抜き試験を行った結果、木材の腐朽度と釘の腐食度から釘接合部の残存引抜き耐力を推定することができた。また釘引抜き耐力よりもめり込み強度の方が腐朽の影響を大きく受けることが明らかとなった。 釘接合部のせん断性能は主材および側材の厚さの影響も受ける。平成27年度は主材への打ち込み長さおよび側材厚を変化させて腐朽処理をし、単位釘接合部の一面せん断試験を行った。主材および側材内の健全部長さの合計が小さくなると釘接合部の終局耐力は低下し、この低下率は釘接合部の仕様に関わらず同じ傾向を示した。主材と側材間に腐朽部があるときに初期剛性は低下し、初期剛性が大きく低下したときに荷重-変形関係の形状が顕著に変化した。 木造住宅では多数本の釘を打つことで構面が構成されている。平成28年度は4本釘打ちした接合部の一面せん断試験を行った。健全材の釘は概ね等しい変形形状だったが、腐朽材の釘は箇所によって異なる変形形状を示した。終局耐力の低下よりも初期剛性の低下が著しかった。腐朽程度と変形レベルに応じた釘接合部のせん断抵抗メカニズムを明らかにすることができた。
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