研究課題/領域番号 |
26850108
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
ロジャース 有希子 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (90726530)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヘミセルロース / カードラン / グルコマンナン / ゲル / 架橋 |
研究実績の概要 |
ゲル(ヒドロゲル)は、高分子の網目構造が水などにより膨潤したものであり、高吸水材料やソフトコンタクトレンズなどとしての材料、またその高い含水率としなやかさのため生体親和性の高いソフトマテリアルとして注目され、医療材料などへの応用が期待されている。多糖類には、ゲル化能を有するものがいくつも知られており、ゲル化剤や増粘安定剤といった食品添加材として用いられている。既存の多糖ゲルは、ほとんどが水溶液中で形成されるヒドロゲルで、水素結合などによりゲル化しており、一般的に力学強度が弱いという問題点があり、材料の分野での実用化に課題が残されている。 本研究では、化学架橋による多糖ゲルの高強度化を目指し、カードランやグルコマンナンの架橋ヒドロゲルの調製とその物性評価を行った。カードランあるいはグルコマンナンのアルカリ水溶液から、エチレングリコールジグリシジルエーテルを架橋剤として、ヒドロゲルを得ることに成功した。特にカードランヒドロゲルからは自立したゲルが得られた。カードランゲルは、圧縮した際、非線形弾性変形を示した。圧縮の際、水が染み出す離水は起こらなかった。さらに、90%以上の圧縮後も破断されない上、圧縮を止めると直ちに元の形に戻るという、非常に変形性に富む柔らかくしなやかなゲルであることがわかった。また、ゲルに対して繰り返し圧縮を行っても、形状に回復率や弾性率にほとんど変化が見られなかった。カードランゲルは、現在研究例の多い、高強度高弾性率のゲルとは異なり、高い変形性を有する柔らかくしなやかな新規の素材になり得ると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度までは、多糖の架橋によるプラスチック材料化を目指していたが、多糖の水酸基を一定レベルまでエステル化して化学修飾してから架橋するというこれまでの合成経路では、多糖エステルが完全に水にも有機溶媒にも不溶になってしまい、熱溶融性も失われるため、まったく加工性がなくなってしまっていた。本研究では、先に化学架橋を行ってから水酸基を化学修飾し材料化するという経路に変更し、まず多糖の化学架橋を行った。その際に得られたカードランヒドロゲルの物性を評価したところ、思いがけずこれまでの多糖ゲルでは報告されていなかった柔らかくしなやかなゲルを得ることに成功した。したがって、研究は当初の計画以上の結果が得られたと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
カードランゲルの化学架橋状態を保ったままで水酸基をエステル化などにより化学修飾する。多糖は水酸基をエステル化することで有機溶媒に可溶になり、熱可塑性も付与できる。水素結合などにより形成された多糖ゲルでは、水酸基を化学修飾すると水素結合が切断され、有機溶媒中では分子分散してしまう。本研究で調製した多糖ヒドロゲルはあらかじめ分子鎖同士が化学的に結合した状態であるため、化学修飾を施してもその架橋状態を保持しており、有機溶媒などに膨潤するオルガノゲルになると期待される。多糖オルガノゲルの種類や溶媒の適切な選択により、高温や乾燥条件下で利用可能なゲルの作製を検討する。
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